『風林火山』vol.36「宿命の女」
何と言いますか、物凄い起伏の激しい回でしたね。
前半のまったり&ゆるゆるモードから(何げにBGMがツボ!)、後半はやや視聴者置き去り状態の感も否めない急展開。
「激震」のインパクトとしては十分過ぎるほどでしたが、ただ、もう少しコトの経緯をきちんとドラマで見せて欲しかったという気も… (-_-;)
しかし、毎度うならされますが、複数の類似エピソードを並立させながら、最後は一点に集約してしまうお手並みは大したものと…。
於琴姫・由布姫・大井夫人・美瑠姫…、一度は武田に敗れ、しかし、その仇の武田の下で生きる宿命を負った女性達の悲哀。於琴姫に関しましては、お祖父さんの代と言いますと、彼女が生まれる遙か以前にほぼ決着のついている話ですから別にして、残る三人の境遇は過去・未来、あるいは選択A・選択Bのように、その心情にはそれぞれどこか互いに重なり合うものを持っていると言えましょう。
先週分で「お屋形様の首級を頂戴したくなる…」などと物騒なことをつぶやいた由布姫と、今回ついにそれを実行してしまった美瑠姫。この二つは元より対になるよう、意図的に話が組み立てられていますので、「何とまあ都合よく…」なんてツッコミはなしにしまして、少し真面目(?)に、この二人の違いはどこにあったかと考えてみると、詰まる所は「適切な理解者がいたかどうか…」ではないかと…。
大井夫人の「定めを背負うた女は時に悲しい、されど強いのです」
小山田の「定めは恨んではならぬ、強く生きるのじゃ」
いずれも励ましの意味を込めて発せられた言葉ながら、双方から受ける印象は少しずつ違っていて、前者は定めに抗うことも肯定しているの対し、後者にはそれを否定しているかのように感じられました。
未だに残る武田への恨みを「諏訪の平安を勝ち取る」という形に転化させて、その戦いを続けることが新たな生きる目的にもなろう…。この大井夫人の論理は、実際に同じような道のりをたどって来た体験者ならではの発想でしょうね。受ける由布姫の方も、武田への恨みも含めて、ありのままの自分を受け入れられた(と感じられた)ことで、それまで胸に抱えていた鬱屈としたものが随分軽くなったものと…。
恨みもまた生への大きな原動力になるとすれば、逆にそれを否定するかのような発言をしてしまったのが小山田。「定めを恨むな」という言葉は受け取りようによっては「定めに従え」となりますからね。美瑠姫にとっての定めが「亡き父母、夫の敵討ち」である限り、敵の小山田に愛情を抱くことはそれに抗うことを意味し、ここで彼女はわずかでも心に育ちつつあったその想いを否定せざるをえなくなり、結果、唯一の逃げ道を失ってしまったとも言えるのではないでしょうか。
そして止めが、藤王丸の死に半笑い状態だった小山田の反応。内心では「ホッとした」という本音の表れか、それとも、せっかく「我が子として育てる」覚悟を決めたそばからその必要性がなくなった運命の皮肉に対する自嘲だったか…。いずれにせよ、あれで「この人は私の悲しみを共有してはくれない」→「私は一人っきり」と曲解して、自分の殻に閉じ籠ってしまい、精神的に追い詰められ遂に凶行に及んだ…ということではないかと…。
裏を返せば、由布姫は壊れるギリギリ一歩手前で、大井夫人によって「私を理解してくれる人もいる」→「私は一人じゃない」と気づかされ、そのおかげで晴信くんの命も助かったと…。つまり晴信を守ったのは大井夫人の母心。何を置いても「母の愛は強し!」ってことですかね。
せめて、もう少し小山田が女性の心理に敏感であれば…。
勘助の謀略も見抜くほどの洞察力・勘の良さも、対女性には何の役にも立たなかったと…(-_-;)
もっともそれ以前に、勘助の秘めたる想い&密かなる野望が、既にそうとは呼べないほど、ほとんど明け透けの状態になっていて、何も小山田だけが特別という感じもしませんし、軍略×、女性関係×で良い所なし…の判定の方がよいのでしょうか? (^^;)
今回のもう一つのポイントである今川との外交問題にしても、雪斎に簡単に見破られているし、勘助を毛嫌いしている義元殿はともかく、寿桂尼様の警戒レベルは駒井の機転も空しく急上昇。また、あまりにも武田が今川を攻めることが既定路線のような話の進められ方や、それによって義信が反発することを今から真剣に案じている晴信にも、どうしても違和感がついて回りますし…。
この件については、次回以降に繋がって行くことなので、実際に見れば納得が行くのかもしれませんが、それにしても、
「予知能力者だらけでは白けます!」
勘助が密かにその意図を持って謀略を画策するのはアリですが、果たして現段階でそれをここまで大っぴらにする必要があるものかと…。
三国同盟が前提なら、今川が犬猿の仲だった北条に娘を差し出すのを渋り、代わりに武田へ…という流れが自然のように思いますし、晴信もここは盟約が成れば信濃&越後攻略に専念できると安堵してればいいのではないでしょうか。
雪斎にしても、仮に勘助の真の目的に気づいていたとしても、それを現実にするには、まず越後まですっかり平らげてしまうことが条件になりますから、その前に今川が上洛を果たし、天下の覇権を握ってしまえばどうということのない話。そのためにも盟約締結は重要ですから、下手に義元らに疑心を持たせるより、ひとまず旨味だけ強調して即決させるのが得策のようにも…(駒井のポイントアップを狙ったのかもしれませんが、「献策が山本勘助なら…」の下りは不要だったのでは?)。
何と言っても「桶狭間の戦い」、これが全ての予定を破綻させた張本。そして、この時になってようやく勘助の立てた策の効果が出始めるわけで、小耳に挟んだ話では、やはり勘助が桶狭間にも関わって来るようですから、それならなおのこと、今の時点では作為を表立って見せない方がよかったのではないかと…。
宣伝のし過ぎで逆に広告倒れ…、そういう事態に陥らないことを祈るばかりです (-_-;)
前半のまったり&ゆるゆるモードから(何げにBGMがツボ!)、後半はやや視聴者置き去り状態の感も否めない急展開。
「激震」のインパクトとしては十分過ぎるほどでしたが、ただ、もう少しコトの経緯をきちんとドラマで見せて欲しかったという気も… (-_-;)
しかし、毎度うならされますが、複数の類似エピソードを並立させながら、最後は一点に集約してしまうお手並みは大したものと…。
於琴姫・由布姫・大井夫人・美瑠姫…、一度は武田に敗れ、しかし、その仇の武田の下で生きる宿命を負った女性達の悲哀。於琴姫に関しましては、お祖父さんの代と言いますと、彼女が生まれる遙か以前にほぼ決着のついている話ですから別にして、残る三人の境遇は過去・未来、あるいは選択A・選択Bのように、その心情にはそれぞれどこか互いに重なり合うものを持っていると言えましょう。
先週分で「お屋形様の首級を頂戴したくなる…」などと物騒なことをつぶやいた由布姫と、今回ついにそれを実行してしまった美瑠姫。この二つは元より対になるよう、意図的に話が組み立てられていますので、「何とまあ都合よく…」なんてツッコミはなしにしまして、少し真面目(?)に、この二人の違いはどこにあったかと考えてみると、詰まる所は「適切な理解者がいたかどうか…」ではないかと…。
大井夫人の「定めを背負うた女は時に悲しい、されど強いのです」
小山田の「定めは恨んではならぬ、強く生きるのじゃ」
いずれも励ましの意味を込めて発せられた言葉ながら、双方から受ける印象は少しずつ違っていて、前者は定めに抗うことも肯定しているの対し、後者にはそれを否定しているかのように感じられました。
未だに残る武田への恨みを「諏訪の平安を勝ち取る」という形に転化させて、その戦いを続けることが新たな生きる目的にもなろう…。この大井夫人の論理は、実際に同じような道のりをたどって来た体験者ならではの発想でしょうね。受ける由布姫の方も、武田への恨みも含めて、ありのままの自分を受け入れられた(と感じられた)ことで、それまで胸に抱えていた鬱屈としたものが随分軽くなったものと…。
恨みもまた生への大きな原動力になるとすれば、逆にそれを否定するかのような発言をしてしまったのが小山田。「定めを恨むな」という言葉は受け取りようによっては「定めに従え」となりますからね。美瑠姫にとっての定めが「亡き父母、夫の敵討ち」である限り、敵の小山田に愛情を抱くことはそれに抗うことを意味し、ここで彼女はわずかでも心に育ちつつあったその想いを否定せざるをえなくなり、結果、唯一の逃げ道を失ってしまったとも言えるのではないでしょうか。
そして止めが、藤王丸の死に半笑い状態だった小山田の反応。内心では「ホッとした」という本音の表れか、それとも、せっかく「我が子として育てる」覚悟を決めたそばからその必要性がなくなった運命の皮肉に対する自嘲だったか…。いずれにせよ、あれで「この人は私の悲しみを共有してはくれない」→「私は一人っきり」と曲解して、自分の殻に閉じ籠ってしまい、精神的に追い詰められ遂に凶行に及んだ…ということではないかと…。
裏を返せば、由布姫は壊れるギリギリ一歩手前で、大井夫人によって「私を理解してくれる人もいる」→「私は一人じゃない」と気づかされ、そのおかげで晴信くんの命も助かったと…。つまり晴信を守ったのは大井夫人の母心。何を置いても「母の愛は強し!」ってことですかね。
せめて、もう少し小山田が女性の心理に敏感であれば…。
勘助の謀略も見抜くほどの洞察力・勘の良さも、対女性には何の役にも立たなかったと…(-_-;)
もっともそれ以前に、勘助の秘めたる想い&密かなる野望が、既にそうとは呼べないほど、ほとんど明け透けの状態になっていて、何も小山田だけが特別という感じもしませんし、軍略×、女性関係×で良い所なし…の判定の方がよいのでしょうか? (^^;)
今回のもう一つのポイントである今川との外交問題にしても、雪斎に簡単に見破られているし、勘助を毛嫌いしている義元殿はともかく、寿桂尼様の警戒レベルは駒井の機転も空しく急上昇。また、あまりにも武田が今川を攻めることが既定路線のような話の進められ方や、それによって義信が反発することを今から真剣に案じている晴信にも、どうしても違和感がついて回りますし…。
この件については、次回以降に繋がって行くことなので、実際に見れば納得が行くのかもしれませんが、それにしても、
「予知能力者だらけでは白けます!」
勘助が密かにその意図を持って謀略を画策するのはアリですが、果たして現段階でそれをここまで大っぴらにする必要があるものかと…。
三国同盟が前提なら、今川が犬猿の仲だった北条に娘を差し出すのを渋り、代わりに武田へ…という流れが自然のように思いますし、晴信もここは盟約が成れば信濃&越後攻略に専念できると安堵してればいいのではないでしょうか。
雪斎にしても、仮に勘助の真の目的に気づいていたとしても、それを現実にするには、まず越後まですっかり平らげてしまうことが条件になりますから、その前に今川が上洛を果たし、天下の覇権を握ってしまえばどうということのない話。そのためにも盟約締結は重要ですから、下手に義元らに疑心を持たせるより、ひとまず旨味だけ強調して即決させるのが得策のようにも…(駒井のポイントアップを狙ったのかもしれませんが、「献策が山本勘助なら…」の下りは不要だったのでは?)。
何と言っても「桶狭間の戦い」、これが全ての予定を破綻させた張本。そして、この時になってようやく勘助の立てた策の効果が出始めるわけで、小耳に挟んだ話では、やはり勘助が桶狭間にも関わって来るようですから、それならなおのこと、今の時点では作為を表立って見せない方がよかったのではないかと…。
宣伝のし過ぎで逆に広告倒れ…、そういう事態に陥らないことを祈るばかりです (-_-;)
by kiratemari
| 2007-09-12 19:10
| テレビ
|
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|
Comments(2)
大井夫人と小山田の対比に関する手鞠さんの考察、なるほどと思いました。
何と申しますか、大井夫人は相変わらずかっこいい。今回のラストで勘助とついに対面するところなど、ゾクゾクしてしまいました。次回で退場とは、もう残念で残念で。大井夫人亡きあとは、寿桂尼様の活躍に期待です(川中島合戦後も存命だし)。
それにしても、女に振りまわされる勘助は表情の変化が生き生きとしてて(笑)面白いなぁ。
最初にリツが登場した時から「腐女子系?」と思っていたのですが、他にもそういう感想を述べておられるブログがあったりして、ああ、やっぱり。
ツンデレの由布姫、ヤンデレの美瑠姫、天然お嬢さま系の於琴姫、腐女子系リツと、なんだかギャルゲーのような布陣ですね(笑)。
何と申しますか、大井夫人は相変わらずかっこいい。今回のラストで勘助とついに対面するところなど、ゾクゾクしてしまいました。次回で退場とは、もう残念で残念で。大井夫人亡きあとは、寿桂尼様の活躍に期待です(川中島合戦後も存命だし)。
それにしても、女に振りまわされる勘助は表情の変化が生き生きとしてて(笑)面白いなぁ。
最初にリツが登場した時から「腐女子系?」と思っていたのですが、他にもそういう感想を述べておられるブログがあったりして、ああ、やっぱり。
ツンデレの由布姫、ヤンデレの美瑠姫、天然お嬢さま系の於琴姫、腐女子系リツと、なんだかギャルゲーのような布陣ですね(笑)。
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鹿苑さん、お久しぶりです!
次回の大井夫人と勘助のガチンコ対決は楽しみですね。
この二人が初対面というのはちょっと驚きですが… (^_^;)
何だかんだ言っても、女性陣も大井夫人&寿桂尼様の渋系路線に、由布姫&三条夫人&雄琴姫、そしてリツと若手の方もキャラがバラエティに富んでいて、彼女達の間で右往左往している勘助の図というのも、良い意味でエッセンスになっていると思いますね。
特にリツの登場はナイス・ヒットだと…(^^)v
次回の大井夫人と勘助のガチンコ対決は楽しみですね。
この二人が初対面というのはちょっと驚きですが… (^_^;)
何だかんだ言っても、女性陣も大井夫人&寿桂尼様の渋系路線に、由布姫&三条夫人&雄琴姫、そしてリツと若手の方もキャラがバラエティに富んでいて、彼女達の間で右往左往している勘助の図というのも、良い意味でエッセンスになっていると思いますね。
特にリツの登場はナイス・ヒットだと…(^^)v
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