『風林火山』vol.21「消えた姫」

さて、一連の由布姫話も今回でひとまず区切りに。
第16回の「運命の出会い」から足掛け6回(期間にして1ヵ月半)もかけて来た、その集大成に当たる回だけあって、演者&制作者側のハンパでない力の入れ具合はビシバシ伝わって来たものの、それに見合う成果が得られたか?といえば…、
正直答えに困りますね (-_-;)



 
今回の内容を「良かった」と思うか、「つまらない」と思うか…、その分岐点となるのは、やはり由布姫の本心を上手くつかめていたかどうかでしょうか。

先々週の第19回「呪いの笛」で、初めて晴信とまともにぶつかり合って、そこで彼女が瞬時に恋に落ちてしまっていたことに気づけていれば、先週から今週にかけての三条夫人への嫌がらせの数々も、晴信を恋い慕うゆえの妬み心から出たものだとすぐにピンと来そうなもので、そうした浅ましい心を晴信に知られてしまったことで自暴自棄になり、挙句に出奔という流れも、そう違和感なく追って行けると思うのですが、その肝心の最初でつまづいていたりすると、ただいたずらに周りを振り回し、罪もない侍女まで死に追いやる、とにかく傍迷惑この上ないお姫様としか受け取れないかもしれませんね (^^;

実家を滅ぼし、父を死に至らしめた憎い仇という大きなしがらみのために、晴信に恋したことを全否定して無理やりに胸の奥深くへと押し込め、それでも片やその晴信との夫婦愛を誰憚りなく大っぴらにできる三条夫人を目の当たりにすると、否応なく湧き上がる嫉妬心を抑えることもできず、ついつい罵倒するような言葉を浴びせてしまう…。それも結局は全て跳ね返って来て、ただ自分が傷つくだけの不毛な行為なのですけどね。

その辺の心情を汲みとりながら見ることができれば、憎悪と恋慕の相反する思いに心を引き裂かれ、破滅的な行動によって終止符を打とうとする、一見、支離滅裂なような彼女の考えにもある程度合点が行き、そんな不器用さに哀れみを感じることもできるのでしょうが…。

どうも、お堂での由布姫の告白で勘助が受ける驚きをそのまま視聴者にも味わってもらおうとの思いが強すぎてか、意図的に姫の本音を曖昧にして来たことが、かえって混乱の元になっているような気もしますね。

こういう展開の場合には、額面どおりの「本当は晴信のことが好きだったんだ…」というサプライズばかりでなく、姫の晴信好きをわかった上で、勘助の一人相撲におかしさや切なさを感じるような見方もあるわけですから、あと一つぐらいもう少しわかりやすいヒントがあってもよかったように思います。それこそ、三条さんのセリフの「あの目は何を訴えようとしているのか?」の疑問形をズバリ「あれは恋する者の目」と断言してもらってもよかったような…(前回分で笛の音に恋心を感じ取っておいて疑問形もおかしいような気がしますし)。


それにしても、由布姫と勘助、何げに行動パターンに共通性があるように見受けられるのは、これもやはり意図的なのでしょうね。

かつて信虎への恨みに凝り固まっていた勘助は、晴信の「大望がなければ恨みを晴らしたところで何になろう」の言葉で心は既に屈服させられていながら、そのことに自分自身でも気づかずに放浪を続け、海ノ口での再会でようやくそれを自覚したような感じで…。

あの時の、心身ともにズタズタの状態で雪の中を彷徨っていた勘助の姿が、ちょうど今回の由布姫の出奔と自然と重なり合うような気がして、勘助もそんな我が身を見る思いの姫だからこそ、断じて放ってはおけない気持ちになる…、そういう解釈をすれば、姫のことになると急に箍が外れたように勘助のキャラが激変するのにも、まあ、何とか説明がつくでしょうか。

とはいえ、これを恋愛感情と呼ぶのは妥当ではないでしょうね。だいたいあの告白を聞いた時の勘助の反応からして、姫の本心を読み違えていた驚きや悔恨はあっても、失恋の痛手など全く見えない切替の良さでしたし、何より時代物の大前提として、二人の間には絶対的な「身分の格差」が立ちはだかり、本来そうした考えを生む余地すら許さないものですから…。

実際、高々16歳の少女が、50近い「おじいちゃん」と呼んでも差し支えのないような男を恋愛対象として見るというのは、絶対無いとは言い切れないものの、かなり特異な例。ただ、ことこのドラマ内に関しては、勘助の見た目の若さに比して、晴信にはどこか老成した雰囲気があり、さらに由布姫も若干老けて見えるため、姫が勘助と晴信の間で揺れる図も容易に想像できてしまうだけのことで…。

まあ、そういうゴシップ風の興味を惹くことも、当然念頭に置いてのこのキャスティングなのでしょうけど、しかし、この先、さらにどういう展開を見せるのかはわかりませんが、これ以上、姫に入れ込み過ぎる勘助というのは、あんまり見たくないような… (-_-;)


とまあ、そんなこんなで、散々嵐を巻き起こしつつ、最後は落ち着く所に落ち着いた由布姫話。やっぱり長すぎたというのが正直な感想ですね。最初の説得に係るエピソードをもう少し整理して、せいぜい4~5回のうちに収めていれば、もっとすっきりと見られたのではないかと…。何と言いますか、尺を合わせるために、無理に時間稼ぎをしているような間伸び感もあって…。

目下、放映と並行して順次刊行されているノベライズ本が、それぞれ「風の巻」「林の巻」と銘打たれている所を見ても、一年の尺を大きく4つの章に区切り、各章の世界観を該当の文字から連想される雰囲気で統一して、それぞれに変化を持たせようとの意図があるのは明らかですからね。

信虎追放をヤマ場にした第一パートは、文字通り「疾風」の如き目まぐるしい展開でグイグイ押し出し、由布姫話が軸の現在進行中の第二パートは、一転して「静」で密やかに力を溜め込み、間もなく始まる第三パートでそれを一気に爆発させて烈火の如く燃え上がらせる…という具合に。前回の合戦パートがあっけなかったのも、そういう算段あってのことと思えば納得も行きますし。

ただ、そういう括りをわざわざ作ったことで、展開のスピード感に大きな偏りができてしまった点が、結果として、「策士策に溺れる」という形にならなければとの危惧も…。今川や北条まで大々的に巻き込んでの信虎追放劇と同じような配分で由布姫話を組み立てれば、そりゃテンポも悪くなろうってものですからね(ほとんどが勘助と姫の関係に終始するらしい原作を思えば、これでも縮めた方なのかもしれませんが)。

もっとも、当初の急展開が心地よいと感じていた視聴者層にはまどろっこしいように思われても、早すぎてついて行けなかった向きには、むしろちょうど良い進行速度に落ち着いたと言えるかもしれませんから、一概に決め付けられるものではありませんけど(しかし、後者の層だとそれ以前にとうに脱落していて、ここへ来ての視聴再開は望み薄な気もしなくはなく…)。

まあ、いずれにせよ、次回辺りからはまた戦の話の比重がグッと高まって、自ずとテンポアップして来ることと思いますが…。


ということで、来週はかなりお久しぶりの方々と再会できるようで…。
特に義元&雪斎コンビの再登場には、「今度は何をやらかしてくれることやら…」と今からワクワクしております (*^^)v
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by kiratemari | 2007-05-30 19:26 | テレビ | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from いま話題のエンターテイメ.. at 2007-06-05 12:44
タイトル : 風林火山
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Commented by 鹿苑 at 2007-05-30 21:37 x
 ツンデレにさんざんふりまわされたあげく、お堂で玉砕した勘助が大変可愛かったので、私的には満足でした、由布姫話。ていうか、由布姫はある意味どうでも良くって、あれは勘助を楽しむパートだなぁ、と。
 あと、大井夫人も良かったです。由布姫を諭すところなんか、グッときました。
Commented by 手鞠 at 2007-05-31 13:02 x
鹿苑さん、こんにちは~♪
今回はお堂での玉砕ぶりもですが、姉さん被り(?)姿の勘助くんも中々ツボでしたよね(*^^)v
ああいう茶目っけなところが妙に可愛くて、これがまた役年齢を若返らせてしまう逆作用も生んでいるのかもしれませんが、でも、やっぱり見てて楽しいですものね。

大井夫人は特に尼姿になってからは年相応の包容力が出て来て、とてもいい感じになって来たと思いますよ。ただ、周囲のあまりの濃さに、どうしても印象が薄くなりがちではありますが… (^^;)

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