洛南・宇治散策(2)~平家物語の史跡をたどる
さて、この度宇治を訪れようと思い立った第一の動機は先に挙げた「藤の花」でしたが、その次に来るものは…、やはり源平物しかありませんね (^_^;)
その源平物のお話に入る前に、せっかくですので、現在、平等院にて期間限定で見ることのできる貴重な物のご紹介を先にしておきますね。
ここ平等院では平成16年から行われている平成大修理がなお継続中ですが、修復作業の終了したものについては順次、併設のギャラリー「鳳翔館」にて一般公開されていて、現在の目玉は本尊の阿弥陀様の鎮座する場所の天上を飾る天蓋の一部で、巨大なお皿のような「円蓋」(写真参照)。
修復といっても、剥落の激しい漆や金箔を新たに貼り直すというのではなく、あくまでもこれ以上剥げ落ちることのないよう「剥落止め」を施すだけで、基本は現状維持ですが、それにしても、幾星霜を重ねても、金箔の輝きというものは決して褪せることがないのですね。
間近で見られる分、剥落してしまった所が気にならないといえば嘘になりますが、それでも見れば見るほど輝きが増して来るようで、また、じっと見ていると何だかすうっと吸い込まれて行ってしまいそうな、そんな不思議な感覚も覚えました。
他にも鳳凰堂内の往時の姿を復元したブースなどもありますし、何より「鳳翔館」への入館料は拝観料に含まれていますので、来訪の際にはどうか必ずお立ち寄りのほどを。
ということで、長い前置きはこれぐらいにして、本題の源平話へ参りましょう。
京と南都(奈良)を結ぶ道筋の途にある宇治は、古来より交通の要衝であったために幾度となく合戦の舞台になりました。源平争乱の時代にも、以仁王&源頼政らの挙兵に平家が鎮圧に当たった治承4年(1180)、木曽義仲追討のために義経率いる鎌倉軍が侵入した元暦元年(1184)と大きな合戦に二度も見舞われており、平等院の内外にはそれらにまつわる旧跡がいくつか存在します。
まず平等院の入口を入ってすぐ右手、ちょうど藤棚の手前に建つ観音堂の脇にあるのが源三位頼政自害の場所と言われる「扇の芝」。敗戦を覚悟した頼政が、軍扇に辞世の句を書き残し自害したという伝承になぞられ、扇形(厳密には三角形ですが)に芝生が敷き詰められた一画に、辞世の句碑や駒札などが建てられています。
そして、この「扇の芝」の傍らの立札にも記されていましたが、頼政の墓と伝えられるものが同じ平等院内の塔頭(たっちゅう)最勝院の境内にあり、毎年5月26日の命日には「頼政忌」が催されているそうです。
また、同じく平等院内の塔頭・浄土院境内には「頼政碑」と「通圓(円)墓」なるものも。
(上の写真の向かって左端が通圓墓、右端が頼政碑)
通圓は頼政の「政」の一字を賜り通圓政久と名乗った股肱の郎党で、橋合戦で共に戦死しましたが、彼の子孫が宇治の橋守として代々橋の畔で茶店を営み、その名も「通円茶屋」は23代を数える現在も宇治橋のたもと(京阪宇治駅側)にあります(写真は撮り忘れ)。
ところで、平等院内にある二つの塔頭ですが、浄土院=浄土宗、最勝院=天台宗と、異なる宗派の寺院が同居する形になっていて、平等院自体、江戸時代以降はこれら二つの寺院が共同で管理しているそうです。
さて、ここまでは源三位頼政にちなむ史跡でしたが、義経も絡む後年の合戦の方で言えば、「いけずき」の佐々木四郎高綱、「するすみ」の梶原源太影季のガチンコ対決「宇治川の先陣争い」に勝るものはないでしょう。
その先陣争いの記念碑が宇治川の中洲・橘島にあります。
が、これはあくまでも記念碑であって、実際に鎌倉軍が渡河した場所はもう少し川下の方だったようですけど… (^_^;)
そして、同じ橘島の中には宇治にちなんだ柿本朝臣人麿作の万葉歌碑も。
「もののふの 八十氏河の 網代木に いざよう波の 行方知らずも」
宇治川では古くから網代を使って川魚を捕る漁法が盛んで、網代木は宇治の風物詩になるほどでしたが(↑の人麿の歌や百人一首にも「朝ぼらけ宇治の川霧…」というのが)、鎌倉時代の弘安7年(1284)に橋を架け替える際、ある僧から橋が流されるのは「魚霊の祟りだ!」との訴えがあり、その慰霊のために十三重の供養塔が建てられ、網代漁法も禁止になったのだそうです。
で、橘島のお隣、塔島にあるその「浮島十三重石塔」(橋の向こうにみえているヤツです)。
手前の朱塗りの橋は平等院側と塔島を結ぶ「喜撰橋」で、この辺りの川沿いの道は「あじろぎ(網代木)の道」と言って、『源氏物語』散策の道としても知られています。
ということで、実は朝も早うから出張って来たのは、平等院拝観の前に中洲の石碑などの撮影を済ませておきたかったためでした。が、何分にも雨上がりでその後も天候が安定せず、光量不足で写真の出来はあまり良くありませんでしたから、その甲斐はあまりなかったのですけど… (-_-;)
さて、『平家物語』のお次は…。
冗談ではなく『源氏物語』がらみの史跡をお送りする予定です (^^;)
☆Next → 洛南・宇治散策(3)~源氏物語ゆかりのあれこれ
☆Back → 洛南・宇治散策(1)~平等院
その源平物のお話に入る前に、せっかくですので、現在、平等院にて期間限定で見ることのできる貴重な物のご紹介を先にしておきますね。
ここ平等院では平成16年から行われている平成大修理がなお継続中ですが、修復作業の終了したものについては順次、併設のギャラリー「鳳翔館」にて一般公開されていて、現在の目玉は本尊の阿弥陀様の鎮座する場所の天上を飾る天蓋の一部で、巨大なお皿のような「円蓋」(写真参照)。
修復といっても、剥落の激しい漆や金箔を新たに貼り直すというのではなく、あくまでもこれ以上剥げ落ちることのないよう「剥落止め」を施すだけで、基本は現状維持ですが、それにしても、幾星霜を重ねても、金箔の輝きというものは決して褪せることがないのですね。
間近で見られる分、剥落してしまった所が気にならないといえば嘘になりますが、それでも見れば見るほど輝きが増して来るようで、また、じっと見ていると何だかすうっと吸い込まれて行ってしまいそうな、そんな不思議な感覚も覚えました。
他にも鳳凰堂内の往時の姿を復元したブースなどもありますし、何より「鳳翔館」への入館料は拝観料に含まれていますので、来訪の際にはどうか必ずお立ち寄りのほどを。
ということで、長い前置きはこれぐらいにして、本題の源平話へ参りましょう。
京と南都(奈良)を結ぶ道筋の途にある宇治は、古来より交通の要衝であったために幾度となく合戦の舞台になりました。源平争乱の時代にも、以仁王&源頼政らの挙兵に平家が鎮圧に当たった治承4年(1180)、木曽義仲追討のために義経率いる鎌倉軍が侵入した元暦元年(1184)と大きな合戦に二度も見舞われており、平等院の内外にはそれらにまつわる旧跡がいくつか存在します。
まず平等院の入口を入ってすぐ右手、ちょうど藤棚の手前に建つ観音堂の脇にあるのが源三位頼政自害の場所と言われる「扇の芝」。敗戦を覚悟した頼政が、軍扇に辞世の句を書き残し自害したという伝承になぞられ、扇形(厳密には三角形ですが)に芝生が敷き詰められた一画に、辞世の句碑や駒札などが建てられています。
そして、この「扇の芝」の傍らの立札にも記されていましたが、頼政の墓と伝えられるものが同じ平等院内の塔頭(たっちゅう)最勝院の境内にあり、毎年5月26日の命日には「頼政忌」が催されているそうです。
また、同じく平等院内の塔頭・浄土院境内には「頼政碑」と「通圓(円)墓」なるものも。
(上の写真の向かって左端が通圓墓、右端が頼政碑)
通圓は頼政の「政」の一字を賜り通圓政久と名乗った股肱の郎党で、橋合戦で共に戦死しましたが、彼の子孫が宇治の橋守として代々橋の畔で茶店を営み、その名も「通円茶屋」は23代を数える現在も宇治橋のたもと(京阪宇治駅側)にあります(写真は撮り忘れ)。
ところで、平等院内にある二つの塔頭ですが、浄土院=浄土宗、最勝院=天台宗と、異なる宗派の寺院が同居する形になっていて、平等院自体、江戸時代以降はこれら二つの寺院が共同で管理しているそうです。
さて、ここまでは源三位頼政にちなむ史跡でしたが、義経も絡む後年の合戦の方で言えば、「いけずき」の佐々木四郎高綱、「するすみ」の梶原源太影季のガチンコ対決「宇治川の先陣争い」に勝るものはないでしょう。
その先陣争いの記念碑が宇治川の中洲・橘島にあります。
が、これはあくまでも記念碑であって、実際に鎌倉軍が渡河した場所はもう少し川下の方だったようですけど… (^_^;)
そして、同じ橘島の中には宇治にちなんだ柿本朝臣人麿作の万葉歌碑も。
「もののふの 八十氏河の 網代木に いざよう波の 行方知らずも」
宇治川では古くから網代を使って川魚を捕る漁法が盛んで、網代木は宇治の風物詩になるほどでしたが(↑の人麿の歌や百人一首にも「朝ぼらけ宇治の川霧…」というのが)、鎌倉時代の弘安7年(1284)に橋を架け替える際、ある僧から橋が流されるのは「魚霊の祟りだ!」との訴えがあり、その慰霊のために十三重の供養塔が建てられ、網代漁法も禁止になったのだそうです。
で、橘島のお隣、塔島にあるその「浮島十三重石塔」(橋の向こうにみえているヤツです)。
手前の朱塗りの橋は平等院側と塔島を結ぶ「喜撰橋」で、この辺りの川沿いの道は「あじろぎ(網代木)の道」と言って、『源氏物語』散策の道としても知られています。
ということで、実は朝も早うから出張って来たのは、平等院拝観の前に中洲の石碑などの撮影を済ませておきたかったためでした。が、何分にも雨上がりでその後も天候が安定せず、光量不足で写真の出来はあまり良くありませんでしたから、その甲斐はあまりなかったのですけど… (-_-;)
さて、『平家物語』のお次は…。
冗談ではなく『源氏物語』がらみの史跡をお送りする予定です (^^;)
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by kiratemari
| 2007-05-03 22:19
|
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Comments(2)
Commented
by
さくら
at 2007-05-03 22:37
x
手毬さんへ
こんばんは~
手毬さんは宇治にいらっしゃったのですねぇ~~(≧▽≦)
わたしも今、関西に帰ってきていまして、家族のしばりはありますが、スキをみつけて散策に出ていました。
先のブログの、藤の花が綺麗ですね~
こちらの藤も「地摺りの藤」ですか?
とにかく見事ですねぇ。
こんなお写真を見たら、宇治に行けばよかった(><)と思いました。
わたしは、本日福原に行って来ました…めちゃめちゃ「だんじり」中でしたけど…(^^;
今度は、源氏物語ですかぁ~
…わたし、ちゃんと読んでませんが、授業でやったぐらいはなんとかついていけるかと思うので、楽しみにしています~(^^)
こんばんは~
手毬さんは宇治にいらっしゃったのですねぇ~~(≧▽≦)
わたしも今、関西に帰ってきていまして、家族のしばりはありますが、スキをみつけて散策に出ていました。
先のブログの、藤の花が綺麗ですね~
こちらの藤も「地摺りの藤」ですか?
とにかく見事ですねぇ。
こんなお写真を見たら、宇治に行けばよかった(><)と思いました。
わたしは、本日福原に行って来ました…めちゃめちゃ「だんじり」中でしたけど…(^^;
今度は、源氏物語ですかぁ~
…わたし、ちゃんと読んでませんが、授業でやったぐらいはなんとかついていけるかと思うので、楽しみにしています~(^^)
0
さくらさん、こんばんは~♪
このゴールデンウィークは関西にいらっしゃってたのですね。
今回の宇治行きも、もう少し早く行っていれば参考にしていただけたかもしれませんね(汗)。当初は29日に行こうと思っていたのですが、平等院の公式サイトの開花情報によるとまだまだ早いようでしたので、それで2日に延期したのですよ(それでもまだやや早かったようですが)。
あの『源氏物語』といっても、私の教科書は漫画の『あさきゆめみし』ぐらいのものですから(爆)、そんな大したことは書けませんよ。
源氏物語ミュージアムも前に行っているので今回はスルーしましたし、記事そのものもかなり短いものになると思います (^^;)
このゴールデンウィークは関西にいらっしゃってたのですね。
今回の宇治行きも、もう少し早く行っていれば参考にしていただけたかもしれませんね(汗)。当初は29日に行こうと思っていたのですが、平等院の公式サイトの開花情報によるとまだまだ早いようでしたので、それで2日に延期したのですよ(それでもまだやや早かったようですが)。
あの『源氏物語』といっても、私の教科書は漫画の『あさきゆめみし』ぐらいのものですから(爆)、そんな大したことは書けませんよ。
源氏物語ミュージアムも前に行っているので今回はスルーしましたし、記事そのものもかなり短いものになると思います (^^;)
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