『功名が辻』vol.13「小谷落城」

浅井長政殿は最期までイイ男でしたね。
勇猛果敢で且つ心優しくて潔い…これぞ武士の鑑!
過去にドラマに取り上げられたことは数あれど、ここまで心に残る長政殿は初めてのような気がします。

当初は享年29歳(ついでに言うと当時のお市が27歳)でこのキャスティングはないだろうと呆れていた口ですが、いやいや、演技力があれば年齢の壁なんてどうってことありません。
返す返すも、これで見納めかと思うと淋しい限りです。(/_;)



 
ところで、ずっと気になっていた「万福丸の母は誰?」の疑問のお答えですが、結局「側室」で正解だったようです。しかし、千代の説明台詞で済ませる辺りはいかにも…。前もってお市と万福丸の関わりを示す場面を少しぐらい入れておいて欲しかったところです。

お市の万福丸助命へのこだわりが、今回の悲劇の重要なキーになっていただけに、実子であれば母性で押し切れることも、継子では少々説得力不足。

お市の「万福丸はこの世に生を受けて以来悲しいことしか知らぬ」発言にしても、越前での人質生活の苦労を表しているものと思われますが、それしても、あの万福丸の妙にオドオドとした挙動不審ぶりを見ると、いったいどんな扱いをされて来たのか?と逆に気になったりもして…(何かPTSDでも引き起こすほどのひどい仕打ちを受けたとか?)。

そうそう、兄の万福丸よりも遥かにしっかりしていそうな茶々姫が、昨年の大姫役の彼女だったのには驚きでした。あるいは今回1回限りの登場かもしれませんが、目立つ役どころで二年連続登板というのは「好評につき…」としても、ちょっとどうかと思いますね。

さて、小谷城から落ち延びて来たお市と信長の再会。
この兄妹の関係には、何だか妙に妄想を掻き立てられますね。長政の死を知って昏倒したお市に付き添うばかりか、「私は疫病神…」とつぶやく妹を後ろから強く抱きしめる信長には、正室の濃姫の前では毎度つっけんどんなだけに、異様に色っぽく見えましたよ(近親相姦というのはともかく…)。

それでも、妹の必死の願いにも耳を傾けず、非情にも万福丸殺害を命じる信長。
戦国の世ではごく当然の処置ですが、これに表立って異を唱える一豊って、自分がどういう時代に生きているのか全くわかっていませんね。

自らの経験を重ね合わせて、「仇敵だからといって必ずしも敵討ちをするものとは限らない」という意見は分からなくはありませんが、秀吉の言うように、一家老の息子に過ぎない一豊と万福丸の境遇を同列に語ること自体がナンセンス。たとえ万福丸にその気がなくても、旧浅井残党が寄り集まって一大勢力をなしうる可能性も十分あるのですから、新右衛門と吉兵衛しか付き従う者のなかった一豊自身を引き合いに出すなどおこがましいにもほどが…。

それにしても、まあ、つくづくこの一豊くんには戦国武将なんて無理だろうと思う今日この頃。ああも何にでも悩む質だと、去年の義経同様、今すぐにでも出家した方が身のためではないか?と思えてしまいます(千代がいるからできない?)。

千代に万福丸殺害を告白するくだりにしても、良く言えば、嘘のつけない誠実さなのでしょうが、要は腹の据わっていない証。また、それを聞かされた千代にしても、お市さまには黙っておくと言った舌の根も乾かないうちに、あっさりと白状してしまうのですから…、全く相変わらずお子ちゃまな困った夫婦です。

もっとも、千代が市に詰問される場面に関しては、セリフはそのままで、あんなあからさまに動揺した表情を見せるのではなく、表面上はごく自然に振舞いながらも、手元の縫い目の乱れだけは隠せず市に真相を悟られてしまう…とでもしておけば、まだまだ修行が足りないにしても、「少しは成長の後も見られるか?」と感じることもできたでしょうに…。
この辺りは脚本そのものよりも、どうもドジっぷりに可愛げを求める演出(コントとしか思えない仕草の数々など)に問題があるような…(賢妻=小賢しいとでも思っているのでは?)。

現代人ウケする(私はそう思いませんが)好人物に描こうとすればするほど、戦国の世で功名を目指す夫婦としては矛盾だらけになり、本質からどんどんズレて行く一方の悪循環。正直、命の重さ・戦の惨さを痛感する場面もそれなりに必要とは思いますが、でも、それはもっと先の、せめてひとかどの武将になってからで良いのではないでしょうか。まだまだ秀吉の腰巾着を抜けきらない下積みの分際で、あれこれウジウジと悩んでいる場合ではなかろうと…。

ここまで一豊のテンションを落としておいて、また功名第一の猛将に戻さないといけないわけですから、そこにはある程度納得の行く理由付けが欲しいところですが、次回の予告を見る限りでは、お笑いパートのインターバルを入れてほとぼりを冷まして、後は何事もなかったように戦場に立っていそうな気が…。


それはさておき、もう一つのイベント事、
信長物では定番中の定番、髑髏盃=箔濃(はくだみ)。
箔濃とは、薄く漆を塗った上に金粉を振りかけて塗金することで「薄濃」とも表記しますが、浅井長政・久政父子と朝倉義景の三武将の頭蓋骨をその箔濃にして、酒宴の席での肴(おつまみではなく話の種)にしたというエピソード自体は『信長公記』などの史料にも見られるようですが、これで盃を作って家臣に酒を飲ませたという悪趣味な話は、どうやら後世に付け足された尾ひれのようです。

そして、毎度この信長を奇行を諫める人物が登場し、今回は明智光秀にその役割が充てられましたが(これは同じ司馬作品の『国盗物語』にならって?)、かつての『利家とまつ』では前田利家、『秀吉』ではもちろん秀吉だったことを思うと、一豊がこの場に同席できる身分でなかったのは不幸中の幸いだったかもしれませんね。(^_^;)

それにしても、宴の後に、一人淋しく長政の髑髏を前にして「わしはおぬしが好きじゃった…」と涙ながらにつぶやいた信長には、また別の妄想も膨らんでしまって困るのですが…(想像が逞しいもので…)。

「可愛さ余って憎さ百倍!」はまあ分かるとしても、あそこで涙されてしまうと、振った男への意趣返しのようにも受け取れて、小谷でお市を抱きしめながら流した涙にしても、妹を不幸にしたことへの懺悔ではなく、ひょとすると自分に背を向けて死を選んだ長政への恨みつらみによるものだったのでは?なんて思えてしまって…。

それでふと思い出したのが、昨年、某新聞に連載されていた小説『女信長』。
「信長は実は女だった」という奇抜な設定をぶち上げた異色作でしたが、今回の展開を見ると何か同じような臭いを感じるのですよね。

『ベルサイユのばら』のオスカルよろしく、父信秀に見込まれて女であることを隠し織田家を継いだ信長(本名はお長)は、長政の有能さを買って共に天下に号令するパートナーとして信頼を置く一方で、恋心を抱いてやがて愛人関係になるものの、飼い犬に手を噛まれる的な裏切りに遭い、ついには自ら長政を討ち滅ぼしてしまうことに。そうして作らせた髑髏盃。オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』にも通じるこの奇行が、図らずも秀吉に女と見抜かれる原因にもなります。

男であれば、敗者に対して寛容であることが自身を度量の大きな人間に見せる…と考えるところを、女は愛憎に引き摺られて、とことん突き詰めてしまわなければ気がすまない…というような理屈を並べていたように記憶していますが(一度読んだきりで切り抜きとか残していないのでかなり曖昧です)、これは極端な話としても、ドラマ内での信長にも、長政に対して妹婿や同盟相手という名目を越えた強い思い入れを抱いていたことは伺われ、それこそ、長政自らが信長の前に出頭して来ていたなら、秀吉に言った通り、全ての罪を不問に付し、改めて織田の将として迎え入れていたのではないか…とも思わせるほど。

司馬作品にそうした設定のものがあるのか、これも数あるドラマオリジナルの一つなのかはわかりませんが、情の深さゆえに愛するものを次々に破滅させずにはおけない魔性の女のような信長像とすると、次のターゲットになる光秀に対しても、そういう雰囲気は十分に見て取れますし、思えば義昭と光秀の関係にも妖しいものを臭わせることを公言したり、どうも意識的にそっち系を連想させるように持って行っているように感じるのは私の気のせいでしょうか?

今回は、何だかいつも以上に、とりとめのない感想になってしまいましたね。(^_^;)

さて、今週で一つ区切りがついて、次週からまた新たな章が始まるかのような新キャラ投入。そして、一豊が所領持ちになって、千代もようやくパッチワーク小袖からご卒業のようです。
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by kiratemari | 2006-04-04 19:22 | テレビ | Trackback(2) | Comments(2)
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Commented by bluecat at 2006-04-06 09:07
長政はホント、最後までイイオトコでしたね~惜しい漢を亡くしました。
お市が城に残ると言い張っていたのもムリありません。
しかし、長男万福丸、側室の子と説明がありましたが、ここはお市の子としたほうが、信長への助命も真摯さが出てよかったような気もします。
そして、出たぁ~!!髑髏盃(>_<)信長の暴虐さを強調するようなこのシーン、しっかり出てまいりましたが、え、一人で長政の髑髏に告白って、ええっ?!・・・ま、まぁ、この時代は衆道はアタリマエでしたので、
妄想してもおかしくは無いのですが・・・。
信長が実は女だった、という小説があるのですね、ビックリいたしました!
確かに信長のやり方は、考えようによっては破滅的な女性っぽい行為ともとれるのかも・・・!!
いや~、歴史ってホント面白いですね~(水野晴郎か?!)(^^)
Commented by 手鞠 at 2006-04-06 19:01 x
bluecatさん、おっしゃる通り万福丸はお市の実子ということにした方が、ドラマの展開上良かったように思いますね。過去にはそのパターンが多かったですし…。
最新の学説を尊重したのでしょうが、だったら、せめてお市のお輿入れ前後に万福丸の存在を明らかにしておいてもよかったのでは?と思います。

『女信長』は「えーっ!」と思いつつも、「でもなるほどな…」と思わず納得させられるところもありました。多分これはある程度史実を知っている人の方が楽しめる本でしょうね。ただ著者が男性ということもあって、女性の描き方に少々問題がなくもないのですが…。

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