人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ある智将の死

一昨晩、突然舞い込んできた訃報。
あまりにショックが大きすぎて、どうも未だに立ち直れないでいます。




2005年12月15日午後4時10分、仰木彬氏永眠(享年70歳)。

このニュースを知った時、実は、さほどの驚きはありませんでした。
むしろ「やっぱり…」という気持ちの方が強かったかもしれません。

夏場頃から明らかに体調が悪そうにお見受けしていましたし、最後はドクターストップがかかっての監督辞任。おぼろげながら、こういう結果も察していないではなかったのですが、何しろあまりにも突然過ぎて…、二日経った今もまだ、その現実を受け止め切れないでいる状態が続いています。

両親の影響をモロに受けて、子供の頃から「阪急」-「オリックス」を応援して来た私にとって、仰木さんとの出会いの最初は嫌らしい「敵将」でした(といってもあまり記憶はない)。それがめぐりめぐって…、今や、こんなにもその死に大きな衝撃を受けるようになろうとは…。

これまでの長い野球ファン生活の間には、二度ほどその熱も冷めかける岐路のようなものがあったのですが、そのいずれの時にも、結果として私を引き戻したもの…、それは、仰木さんの存在に他ならなかったような気がします。

その一度目は、衝撃の身売りによって「阪急」から「オリックス」に変わり、本拠地も「西宮」から「神戸」へと変わった時。
大阪在住の者にとって、神戸、それも市街地から山一つ越さなくてはならないという立地は、実際の距離以上に遠いものに思われ、この本拠地移転を機に、すっかり足が遠のくこととなりました。

半分は本拠地を移されたことに怒りを感じての非買心理が働いてのことですが、その当時のチーム状況があまりパッとしなかったのも(特に監督さんがねえ…)、それに拍車をかけたようです(所詮は勝ってナンボの世界ですから)。

とはいえ、習慣とは恐ろしいもので、テレビ中継があればとりあえずチャンネルを合わせるなど、依然、気になる球団であったことには変わりなく、やがて、仰木さんの監督就任と共に、チームカラーがガラッと変わるにつれ、当時のイチローフィーバーも手伝って、再び野球熱に火がつき、あれほど行くのを敬遠していた球場へもついに足を運び(当時の名称は「グリーンスタジアム神戸」)、一度行ってしまえば…、後はご想像の通り、LIVEで野球を見る楽しさにすっかりハマリ、またちょこちょこと通うようになっていました。

阪神大震災を乗り越えてのリーグ優勝、翌年の日本一、仰木さんには素晴らしい夢をたくさん見せていただきました(もちろん選手の方々もですが)。

ただ、その一方で、どこか偏りのあるような選手の起用法や采配に疑問を持つこともありましたし、バブルが弾けたように年々低迷して行くチーム事情に、不平不満の気持ちを大にしたこともありました。そして、Bクラスに転落し、ついに「勇退」されることになった時にも、正直「もう少し早く身を引いてくれていれば…」との思いを少なからず持ちもしました。

が、それ以後、ドン底を這い回ることしかできなくなったチームに、改めて、仰木さんの手腕があったればこそ、まだ、あのレベルまで引き上げられていたことを思い知らされ、失ったものの大きさを噛み締めることに…。

そして、昨年、球界を大きく揺るがした合併問題。身から出た錆とはいえ、各方面から球団がヤリ玉に上げられる度に、ファンとしては消滅球団と全く同じ心境なのに、「オリックス」=「悪者」という一辺倒の論調に、何だか一ファンの自分達まで責められているようで、とてもいたたまれない気持ちになり、今度こそファンをやめようか…と思った、これが二度目の岐路でした。

それを引き戻したのは、やはり、他でもない仰木さんの監督再就任でした。
すっかり負け犬集団と化したチームを、この人なら再び戦える集団に変えてくれるかもしれない…。あともう一年付き合ってみるか…という気にさせられました。

そうした期待のまず半分は達成してくれたと感じられた今年2005年のシーズン。
どんじりの指定席からようやく離れ、一時は「プレーオフ進出も行ける!」という希望も持たせてくれました。二強の飛び出しと西武の予想外の低迷があったとはいえ、「大砲不在」「同級生主力野手トリオの絶不調」「先発投手陣崩壊」という目も当てられない悲惨なチーム事情にあって、あそこまで行ければ御の字と言うより他ありません。

ただ、後半の失速が仰木さんの体調悪化とほぼ比例する形になったことを思うと、結局「仰木さん」頼みだったこのチーム。しかも、仰木院政と思えばこそ許容もできた新監督人事。それも白紙となった今、来年以降には大いに不安を抱かざるを得ませんが…。

それにしても、訃報と共に明らかにされた、がんとの闘いと併行しての現場復帰だったという事実。もしも、心身ともに過酷を強いられる監督職など引き受けなければ、後2~3年か、それ以上にも命を存えることができたかもしれないのに…。裏を返せば、命を縮めることになるのも承知で、それでも戻らずにはいられなかったのは野球人の性(さが)か、それとも、生来の勝負師魂のゆえか…。

そんなことを考えていた時、ふと、斉藤実盛や源三位頼政といった人物のことが思い浮かびました。静かな余生を送る道もありながら、それを良しとはせず、あえて敗色濃厚な戦陣へと赴き、壮絶に散って行った老将達。もしかすると、彼らと同様に仰木さんもまた、死に場所を求めて再びグランドに戻って来たのではないかと…。

死という最も悲しい形ながら、長い長い戦いを終えて、ようやく真に安堵の時を得たのかもしれないその魂。今はただ、安らかに…と祈るばかりです。
by kiratemari | 2005-12-17 17:46 | つれづれ | Trackback | Comments(2)
Commented by ちゃんちゃん at 2005-12-18 14:10 x
kiratemariさん、こんにちは。

今ここを覗きましたが、そういえばkiratemariさんはオリックスファンでしたね。
本当に仰木さんの死は残念でした。
実は僕はほとんど仰木さんの足跡を知りませんでした。
今回の訃報で、各メディアで報道されたので、僕も知るところとなりましたが、本当に野球が好きだった方だったんですね。
ユニフォームを着続けた年月は球界でもトップクラスでしょうし、長嶋氏にも負けない程の貢献度かと思いました。
何年だったか忘れましたが、あの伝説のダブルヘッダーは、最後の方を十三駅前のどこかで見た覚えが有ります。 パリーグなんて知らなかった僕なんですがね。

来期はまた不安ですね。
清原とかノリとか入るみたいですが、どうなんでしょうね・・・
どうでもいいですが、最近のプロ野球は人の出入りが激しいのが気に入りません。 だから応援する気持ちも薄れ、視聴率も下がるのでは? と思っています。

仰木さんのご冥福をお祈りします。

Commented by 手鞠 at 2005-12-18 22:46 x
ちゃんちゃんさん、こんばんは~♪
伝説のダブルヘッダーの時はおよそ他人事でしたね(汗)。あの頃は、まさかうちの監督さんになるとは思ってもみませんでしたし…。
でも、改めて仰木さんがオリックスの監督になってくれて本当によかったと思います。それだけに、この死を無駄にしない真摯なプレーを来シーズンは見せてほしいと願うばかりです。

その来期へ向けての大型補強についてはやはり賛否両論ある所ですが、とりあえず今あのチームに最も欠けている、一振りで試合の流れをガラリと変えられるような雰囲気を持つ選手達だけに、個人的には来てもらえればありがたいという気持ちですね。
もちろん、単なる客寄せパンダで終わらることなく、しっかりとした存在感のあるプレーを見せていただくことが前提ですが…。

「きらめきの刹那」 別館  花や史跡の探訪記録や源平&時代物ドラマ話など何でもござれの雑記帳


by kiratemari

ブログパーツ

最新の記事

舞洲 新夕陽ケ丘
at 2022-03-24 21:01
初富士めぐり2022 (2)
at 2022-02-23 19:27
初富士めぐり2022 (1)
at 2022-02-21 21:00
迎春花
at 2022-01-01 08:00
謹賀新年
at 2022-01-01 00:00
摩耶山天上寺
at 2021-12-28 21:14
Merry Christmas!
at 2021-12-24 22:09

リンク

カテゴリ

お知らせ
歴史語り
「きらめきの刹那」関連
書籍
テレビ
エンターテイメント
グルメ
関西探訪
├京都
├大阪
├兵庫
├奈良
├滋賀
└和歌山
旅の記録
├東北
├関東
├中部
├北陸
├四国
├中国
└九州
お出かけ
つれづれ

タグ

(706)
(282)
(159)
(130)
(122)
(111)
(92)
(86)
(63)
(47)
(41)
(41)
(40)
(34)
(23)
(21)
(20)
(18)
(11)
(8)

最新のコメント

壺井勘也
by 辻原俊博 at 21:03
知恩院
by 知恩院 at 21:02
藤原宮跡
by 栄藤仁美 at 20:05
北脇健慈
by 藤原宮跡 at 20:05
ちゃんちゃんさん、こんに..
by 手鞠 at 15:35
 階段の紫陽花が見事です..
by ちゃんちゃん at 08:10
ちゃんちゃんさん、こんば..
by 手鞠 at 20:30
今年は行かれてたのですね..
by ちゃんちゃん at 16:12

最新のトラックバック

以前の記事

2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
more...

検索