『平清盛』vol.23「叔父を斬る」

保元の乱の戦後処理・第2弾。
製作陣の言う第2部の中締めに当たり、第1部からの総括と今後に向けての新旧の伏線が交錯する回でした。




 
まずは源平の敗戦の将の処分は徹底した対比で。
思えば、第3回の「源平の御曹司」で清盛と義朝が出会った時から連綿と紡がれ続けて来た伏線の数々は、ここで集約されるためにあったようなものですね。

「殿上の闇討ち」での忠盛と為義との対決、己の不甲斐なさに身悶える為義に向けた義朝の「父上をお守りいたします」、そして、事あるごとに忠正が口にしていた「平家の禍」などなど、他にもあり過ぎてとても書ききれませんが、中でも義朝の「父上をお守りいたします」は単純にその思いとは裏腹にやがて道を分つようになる父子の運命の皮肉を暗示するものと思っていたのですが、読みが浅かった!

「蛙の子は蛙」とはよく言ったものですが、どんなに強がっていても為義のDNAを受け継いでいる義朝は肝心なところでその本性を露呈。そして、そんな父の弱さを目の当たりにして同じ思いに駆られる幼い鬼武者。正直、最初に義朝の「父上をお守りいたします」を聞いた時はどうも小っ恥ずかしくて、背中がむずむずするような違和感を覚えたのですが(汗)、鬼武者くんの「父上をお支えしとうございます!」でようやく腑に落ちたと…。まあ、全て逆算で組み立てているわけですから、ここで滑ったらもう救いようがないですけど…。


それはさておき、死刑宣告の後、覚悟を持ってそれを受け入れ、執行人たる義朝・清盛を諭した為義と忠正。どちらもかっこ良すぎですよね。忠正さんの方はまああのルックスですから十分予想の範疇でしたが、よもやあの為義さんがあんなに輝いて見える日が来ようとは… (^_^;)

かなり小柄で声を張り上げる度に裏返るし…で、いやしくも武威を誇った源氏の棟梁という役どころとしてはキャラ違いの感も否めませんでしたが、最後の最期でやっと納得させられるものが出たという。数多い伏線の類もそうですが、どれもこれも超遅効性で忘れた頃にぽっと効果が出てくるのがホント勿体ないですよね。

ところで、源平の処刑はドラマ上では同時進行のように描かれましたが、実際は平氏が先で、源氏はその二日遅れで執行されています。平氏が先に忠正の処分を実行したことで、源氏もやらざるを得なくなったという流れでしょうね。この辺りの顛末は『保元物語』や『愚管抄』(忠通の息子の著)が詳しいですが、信頼度の高い史料に『兵範記』というものがありまして、そちらには日付入りで各々の事象が記録されています。
 
《保元元年7月》
   2日 鳥羽法皇崩御
  10-11日 保元の乱
  13日 崇徳上皇が仁和寺へ
  16日 源為義が義朝の許に出頭(横川の辺で出家済み)
  21日 藤原頼長が14日に亡くなっていたことが判明
  23日 崇徳上皇が讃岐国へ移される
  28日 平清盛が忠正らを六波羅の辺で斬首
  30日 源義朝が為義らを船岡の辺で斬首

忠正の斬首より前に崇徳上皇も讃岐へ送られていますので、映像としては出て来ませんでしたがドラマ上も既に流罪執行済みということでしょうね。

なお、「保元の乱」の回でどうもフェードアウトっぽい鎮西八郎源為朝は乱の翌月の8月26日に近江国にて捕縛。彼を捕えたのは近江国を本拠とする源重貞(源氏と言っても為義らとの血縁関係はなし)で、『保元物語』『愚管抄』によれば悪左府頼長の首を射たのも他ならぬこの重貞とされています。

そして、為朝は父や他の兄弟達とは異なり死一等を減じられ伊豆大島へ流刑となりますが(これが当時の常識的な刑罰)、最大の武器の強弓が引けないようにと肘を外して島送りにしたものの、回復するとまた方々で大暴れして、やがて伊豆七島を支配するように。その後、討伐の兵に襲われ切腹して自害。時に保元の乱から十数年後のことでした。

あと、ついでにもう一つ触れておくと、例示しました『兵範記』の著者・平信範は清盛の妻・時子らの叔父に当たり(蛭子さんが扮した時信の弟)、摂関家の忠通に仕えた秘書官的な人物。清盛と摂関家を結びつけるのに好都合の立ち位置にいる存在でしたが、ドラマでは完全スルーでしたね。平清盛をきちんと軸に据えてこの時代を描くなら、本当は忠正との葛藤はそこそこにしておいて、こちら方面をもっと入念に描いた方がベターだったろうとは思いますが…。



ということで、源平の斬首合戦となった前半部については、まあ良かったのですが…。
今回少なからずがっかりさせられたのが信西パート。

前々回に少し触れていました「あれでは少しばかり下野守が気の毒でござります」の答えが師光によって明かされたくだりですが、どうしても引っ掛かってしょうがなかったのが、「信西さんよ、そこでなぜ涙を流す!」

ノベライズでは師光の「思えば戦のさ中より、いやその前より、あなた様はこうなるように仕組んでおられた」の後、

信西は否定せず、かすかな笑みを浮かべた。

となっていまして、ここで一気にテンションが上がったのですよ。
この信西の腹の座りっぷりは半端ない!と。

しかし、O.A.ではさらにこの後も追い打ちをかけ、後白河帝主催の宴後、屈辱に打ち震える清盛に語りかけた信西の言葉の数々、感情的に声を荒げてまくし立てる姿に(弱い犬ほどよく吠える)、またぞろがっかり度が跳ね上がることに…。

こんなところで早くも自己弁護に走りますか…。
何かもうすっかり底が見えてしまったようで、信西さんへの興味も半減してしまったではありませんか!
まあ、勝手に買いかぶり過ぎていた私が悪かったのでしょうが。


ノベライズではもっとクールに清盛に迫り、じわじわと焚き付けて行く感じの信西殿がめっぽう素敵に感じたのですけどね。

「太刀を手にしたこともない者が…、気楽なことを言うな!」
「さよう。私には武力がない。だがこれからの政には武の力は欠かせぬのだ」
「…いかなることじゃ」
「わからぬであろうのう。そなたには知識が足りぬゆえ」
信西がずばりと指摘した。
「こんな世を変えたいであろう。清盛」
清盛は返事をしないが、その目があきらかに肯定している。それもまた、清盛の気性を見抜いた信西の計算なのだろう。
「そのためにこの信西の博識が入用とあらば、いくらでも使うが良い」
信西が立ち去るのを、清盛は一言の反論もできずに見送った。


本文をまるっと引用させていただきましたが、自分の苦しい胸の内などおくびにも出さず、決して情に訴えず、あくまでも突き放したような物言いをしつつ、清盛が自分から動くように仕向けているところに、信西の大物感とその底に秘めた覚悟の程も偲ばれ大いに感心したのですよ。

頼長の死に直面して、遅かれ早かれ自分も同じ道をたどるであろうことを自覚しながら、それでもここまで来たらもう後戻りはできない。そして、自分が倒れた後にまだまだ混迷が続くであろう次代を託せるのは、後白河帝を相手にしても一歩も引かないこの清盛しかいない…。

そこで、まだまだ甘さの抜けきらない清盛の政治家教育に本腰を入れ始め、あるいは忠正を斬らせたのも師光の言った摂関家抑制策の一環という以上に、真の狙いは清盛の内面を鍛えるための荒療治だったのではないか…とまで妄想を膨らませていたのですが…、まさかあんなに弱さを前面に押し出して、実質、清盛に縋るに等しい惨状になろうとは…。

私が清盛だったら、完全に信西を見限るフラッグになっているところですね。
こんなやつのために叔父を斬らされたのか…と失望して、復讐の機会を虎視眈々と狙う…みたいな。

ノベライズ2巻は今回分まででしたし、ストーリーブックも未読ですので、この先の流れは全くわからないのですが、これは信西を端から見殺しにする気まんまんで、わざとそのタイミングを選んで熊野に出掛けて行くとか、そういう展開にでもならないと、正直、腑に落ちないな… (-_-;)
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by kiratemari | 2012-06-13 23:27 | テレビ | Trackback | Comments(0)
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