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人形劇『平家物語』vol.15 - 47~48話

第4部「流転」のラスト2回。
新たな不穏の兆しと共に、いよいよアノ方の最期も… (/_;)



 
 
第47話-九郎殿婚礼
 
平家が安徳天皇を奉じて都落ちして以来、帝不在の異常事態が続いていた京の都では、ついに新帝・後鳥羽天皇が立てられることに。

その即位の式典にあたり、義経は宮中警護の役目を命じられますが、洛中の警護ならいざ知らず宮廷儀式に無位無官のままではNGということで、左衛門少尉兼検非違使に任じられます。
義経は鎌倉の許しなく受けることはできないと辞退しようとしますが、「院旨である!」と一喝された上に、「鎌倉よりそなたを平家追討の総大将にとの内々の奏上が参っておる。ご下命を受けるに遠慮は無用」などと囁かれ、結局丸め込まれてしまいます。

即位式の当日。
煌びやかな鎧兜を纏った凛々しい出で立ちで行列の先導役を務める義経をこの上もなく誇らしげに見守る郎党たち。また、かつて乳母であった蓬子と麻鳥の夫婦も「このお姿を一目常盤様にお見せしたかった…」と感慨に耽ります。

しかし、義経より無断任官を詫びる書状を受け取った鎌倉の頼朝は不快感を露に。
梶原景時も自身の手の者が京より知らせて来たこととして、「まるでご自分が天下を取ったかのように、得意満面で先導役を務めていた」などと報告。自分が京にいれば「何としてもお諌めしたものを…」と悔しがる景時をよそに、頼朝の妻政子は「この際、九郎殿に妻を娶らせては?」と提案し、河越重頼の娘・百合野を薦めます。

頼朝は後白河法皇に対し、婚礼の準備を理由に当初は義経の名で奏上していた平家追討の院宣を取り消し、範頼に下すよう要請。程なく入京した範頼から、百合野が妻に定められたことを告げられた義経は、あまりに性急な話に平家追討から外されたショックも相まって、次第に自室に閉じ籠りがちになります。

そんな主の様子を見かね、今は白拍子を辞めている静を館に呼び寄せようと思い立つ弁慶。共に付き添って来た鎌田正近が近々鎌倉より正室が輿入れして来ることも打ち明けますが、それも承知の上で自ら望んで静は義経の許へ。「たとえ北の方様がお輿入れになるまでの短いひと時でも」と身の回りの世話をするようになります。

やがて範頼ら平家追討軍は京を出立し、鎌倉でも百合野が京へ向けての旅立ちの挨拶のため鎌倉御所を訪問。頼朝から「九郎がそなたに語りしことや、館内でのこと、何に寄らず鎌倉に知らせるように」と暗にスパイ役を命じられますが、父親の河越重頼は「嫁いだ女に夫以上のものはない。九郎殿の御為にはこの父に背き、鎌倉殿の仰せを守らぬことがあってもよい。そなたはただ九郎殿のお気に入らるる妻であればよいのじゃ」と言って送り出します。

そんな遣り取りなど露知らず、京では静と心安らかなひと時を過ごす九郎の姿が。
北の方のことを気にかける静に九郎は「鎌倉殿よりの押し付け妻じゃ。わしには静がおってくれればよい」とつぶやき、静の打つ鼓の音に耳を傾けるのでした。




第48話-いざ、屋島へ

京では義経と百合野の婚礼が執り行われ、それを影ながら見守る静の姿も。

その夜、初夜にも関わらず「疲れたであろう、早く休むがよい」とよそよそしい態度で一人先に床に就く義経。声を押し殺し咽び泣く百合野に「もう家が恋しくなったか」と義経が尋ねると、百合野は静の存在も承知の上で、妻となったからには九郎の力になりたい、自分について来た侍女らの前だけでも自分に優しくして欲しい、そうすれば鎌倉への聞こえも良くなろう…と涙ながらに訴えます。

それを聞いた義経は、鎌倉からの間者と勝手に疑っていたことを深く恥じ、潔く頭を下げます。


さて、これより一旦時系列は無視して重衡話が挿入されます。
鎌倉で囚人生活を送っていた重衡はいよいよ奈良に送られることになりますが、その護送の道中に、人知れず後を追って来る一人の女人の姿が。護送役の狩野介がそれと気づき声を掛けるとそれは千手前。「今一度、重衡様に…」との懇願を受け入れ、狩野介は二人が会えるよう密かに手引きします。

驚きつつも「地獄へ落ちるこの身へのこれは仏のご慈悲であろう」と再会を心から喜ぶ重衡。
千手は自分も「地獄へ共に…」と訴えますが、重衡は「ならぬ!」ときつく説き伏せます。

奈良坂・般若寺が最期の場所と定められ、刑の執行を前に声明を唱えながら廊をめぐりたいとの願いが聞き入れられ、従容と廊を渡る重衡。その姿を影から千手も密かに見守り、心を一つにして「南無阿弥陀仏」と唱え続けますが、やがて重衡は背後から僧に斬られ絶命。息絶えるその瞬間、重衡の袖の袂から蛍火のようなものが静かに飛び立ち、その向かった先には哀れ、時を同じくしてして自害して果てた千手があったのでした。



再び話は戻りまして、

平家追討のため西国へ向かった範頼軍は、周防に陣取るも深追いし過ぎて、逆に背後を絶たれピンチに。兵糧にも事欠き脱走兵が頻発する中、そんなことも知らぬげに暢気に杯を手に気勢を上げる範頼に諌める者は北条義時一人のみ。そんな最中に敵の急襲を受け、一転して富士川の水鳥の羽音さながらの混乱に。

その頃、義経は大夫判官従五位下に任ぜられ、昇殿も許されることになり、ここに九郎判官義経が誕生。「朝廷への忠誠の心、忘れぬようにな」と言う法皇の腹の内はいかに?

雪のそぼ降る中、館に戻った義経を出迎える百合野。
「先に休んでいてよいのじゃ」と声をかけただけで、静のいる棟へ向かおうとする義経に、雪避けの笠を差し掛けて送り届ける百合野。義経は一度手渡された笠を「差して行きなさい」と返しますが、そこに静が現れ「百合野様は私が…」と言って送り届けます。

鎌倉では百合野付きの侍女からの書状で静の存在を知った頼朝が憤慨。
自分たちが輿入れさせた百合野を蔑ろにし、院の寵愛をいいことに増長しているのか!と捲くし立てますが、百合野からの便りを持参した政子は「側女の一人や二人、殿にも身に覚えがありましょうに」と高笑いし、これには頼朝もぐうの音も出ず…。

そこへ北条時政が現れ、義時からの援軍要請を報告。
範頼を一旦退かせ、九郎を総大将にとの進言に頼朝は難色を示しますが、政子が「先に兄宗時を失い、さらにまたもう一人の兄を失うことは耐えられませぬ!」と九郎の登板を強く願い、心ならずも義経を大将軍に任じることとなります。

すぐさま任命の知らせを受け、突然の翻意にいささか狐につままれたかのような心地ながら、頼朝の真意を疑うことなく諸手を上げて喜ぶ義経主従。「義経様は頼朝様が好きなんです。理屈も何もなくただ好きなんです。俺はその義経様が好きです!」と熱弁を振るう鷲尾三郎経春に触発され、弁慶たちも気勢を上げます。

そうして、ついにその日が訪れ、百合野と静の見送りを受け、意気揚々と旅立って行く義経主従。
屋島では見方につくはずの大軍を見込んでその義経を待ち受ける平家が。
いよいよ最後の決戦へと突入して行きます。





ということで、これにて第4部「流転」も完。
義経主従と鎌倉の温度差・意識の違いが明確になって来た2話。
その狭間で苦境に立たされる河越重頼・百合野父娘の潔さ・健気さに泣かされます (/_;)
同時に弁慶のKYさが実に腹立たしい!

静と百合野の両方を傷つけ、頼朝の不興を買うトリプルパンチは、情に走り冷静に大局を見ることができない、参謀役としては甚だ不適格と言わんばかりの描かれよう。でもまあ、義経を清廉潔白・正義の人にしようとすれば、おのずとこういう形になってしまうものでしょうか(弁慶には後ほど名誉挽回(?)の回もございますし)。


そして、忘れてはならない重衡編の完結。
壇ノ浦はおろか屋島より前に先んじて決着を着けてしまうのも、正室の大納言典侍が完全スルーなのも原作通りです (-_-;)

ドラマ的に大納言典侍と千手前(内裏女房も)は並び立てないキャラクターなのでしょうね。
正妻を思いながら千手と通じるのも、千手を思いながら正妻と最後の愁嘆場を演じるのも、その気持ちはわからなくもないけど、でもやっぱり白ける…といった所でしょうか。両者それぞれへの思いをきっちり描く時間的余裕もありませんし、中途半端よりはどちらか一方に集約する方が合理的と…。要は「重衡は女性にモテた」、これに尽きるのでしょうし(爆)。

また、重衡の処刑が民衆の面前ではなく非公開、斬り手も武士ではなく僧に変えられているのも原作の『新平家物語』独自の仕様。個人的に原典『平家物語』にある右馬允知時が必死に探して来た仏像を拝みながら刑に処されるくだりが好きなので、この改変にはどうも疑問符がつきます。

あと気になったのは北条義時が政子の兄になっていたことですね。
この時代の人物の生年については多少疑わしい所もありますが(平家でも中宮徳子と重衡に姉弟と兄妹の二説あり)、一般的に政子=姉、義時=弟で通っていますので非常に違和感を覚えました。

原作の書かれた時代が昭和25~32年頃で、その当時とは歴史事象の認識が異なって来ている所もあるかもしれませんが、重盛を時子の実子としている点なども含め、史実(とされていること)と異なる設定が多々ありますので注意が必要ですね(今の時代ならネットなどでかなり厳しいツッコミを受けそう)。
by kiratemari | 2010-09-21 20:10 | テレビ | Trackback | Comments(0)

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