初秋の大原散策vol.3 宝泉院
勝林院塔頭「宝泉院」。
お隣の勝林院の住職の住まいとして平安時代末期の寿永年間(1182-1183)に設けられた僧坊の一つで、現在の書院は室町時代の文亀2年(1502)の再建とされていますが、俗に「血天井」と呼ばれる客殿縁側の天井が、関ヶ原合戦前に伏見城で豊臣軍を迎え撃った鳥居元忠自刃の際の床板と伝えられていることなどを鑑みると、江戸時代に入ってから再々建、あるいは大々的に改築されたと見るのが妥当でしょうね。
中に入るとまず桔梗の花のお出迎え。
まっすぐ進むと右手に「法然上人衣掛けの石」があり、何でも元はここが玄関だったのだそうです。
そして、この石の先には、樹齢500年とも600年とも700年とも言われる(笑) 立派な枝ぶりの「五葉松」が鎮座。
近江富士を模ったと言われるこの大樹は、さほど広くはない境内では全体を一望することは難しいですが、後ほど思いがけない形で訪問者の感嘆を誘うこととなります。
ということで、いざ書院へ!
《梅》
《竹》
《松》
(以上3つの画像はクリックで拡大表示可)
おめでたい松竹梅の揃い踏み~♪
もうおわかりのことと思いますが、先ほどの五葉松の幹も見事に額縁に収まっております。
敷居と鴨居と柱で仕切られた額縁の中に、日本の美意識の粋を閉じ込めた素晴らしい芸術品。そして、それを眺めながらお抹茶をいただき、水琴窟の音に耳を傾けるひととき…。
「盤桓園」(ばんかんえん=立ち去りがたいの意)の名の通り、いつまでもずっと眺めていたくなる名園です。この時はさほど人も多くなかったので、少し待てば上の写真のように誰もいない状態が訪れましたが(抹茶碗が残っているのはご愛嬌と)、来る紅葉の最盛期にはそうは行かないでしょうね。
本来、額縁庭園の素晴らしさを堪能するには、緋毛氈の敷かれた場所よりも一歩も二歩も下がって眺めるべきなのですが(住職さんもそのようなお説教を)、お茶の接待があるため、嫌でも毛氈の上に座らされる羽目になってしまうのが、さらに鑑賞の障害になっている部分も…。
いっそのこと、お茶席自体をもう少し内寄りに下げれば、多少込み合った時でも、順番を待ちながら人垣の間から思い思いに額縁を楽しむこともできるのでは?…などと思うのは素人の浅はかな考えでしょうか (^_^;)
さて、額縁庭園を楽しんだ後は、もう一つの庭園「宝楽園」へ(本当の順路はこちらが先のようでしたが)。
緑豊かな「盤桓園」とは打って変わって、こちらは枯山水の回遊式庭園。
冊子によれば「仏神岩組雲海流水花庭 を趣向し、地球太古の創生に遡り、その原初の海を想像」して、2005年3月に新たに作られたものだそうです。
ぱっと見た感じでは銀閣寺の庭園のミニチュア版のようにも映りますが(汗)、海流水に見立てたという白砂が時に激流のようにも見え、すっと吸い込まれて行きそうな不思議な感覚を覚えました。決して広くない空間なのですが、無限の広がりを感じるような…、白という色にはそういう特性があるのかもしれませんね。
巧妙に配置された石組。
よく見ると岩肌には梵字のようなものも彫り込まれています。
つくばいもどこか原始的な風情?
二つの個性的な庭園が楽しめる宝泉院。
抹茶とお菓子の接待込みとはいえ、800円という拝観料をどう評価するか少し悩む所ですが、それでもいつかまた訪れたくなる…、そういう場所であることはまず疑いのない所ですね (^.^)
【このページの写真&動画は平成19年10月13日に撮影したものです】
《メモ》
宝泉院 〈地図〉
京都市左京区大原勝林院町187
拝観料… 一般800円、高・中学生700円、小学生600円(抹茶・菓子付き)
拝観時間…9:00-17:00
by kiratemari
| 2007-10-19 18:39
| ├京都
|
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|
Comments(2)
待ってました!\(^o^)/
これですよ、これが見たかったんです。特に1枚目の写真がステキですね。ありがとうございました(;_;)ウルウル
これですよ、これが見たかったんです。特に1枚目の写真がステキですね。ありがとうございました(;_;)ウルウル
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sanraku2さん、こんばんは~♪
そのように喜んでいただけて私も嬉しいです。
しかし、これでも抹茶碗が残っている数だけ、少し前までそこに人がいたわけですので、端境期であろうと午前中だろうと、結局その時の運次第ということに… (-_-;)
ともかく宝泉院さんこそ「早朝に限る!」のようですね。
帰り際に参道ですれ違った観光タクシーの運転手さんも、お客さん相手に「午後からはやめておいた方がいい」ときっぱり言い切ってらっしゃいましたし、もし団体さんに出くわそうものなら目も当てられませんから、まずは団体客の到着し始める10時頃までが勝負かと…(^_^;)
そのように喜んでいただけて私も嬉しいです。
しかし、これでも抹茶碗が残っている数だけ、少し前までそこに人がいたわけですので、端境期であろうと午前中だろうと、結局その時の運次第ということに… (-_-;)
ともかく宝泉院さんこそ「早朝に限る!」のようですね。
帰り際に参道ですれ違った観光タクシーの運転手さんも、お客さん相手に「午後からはやめておいた方がいい」ときっぱり言い切ってらっしゃいましたし、もし団体さんに出くわそうものなら目も当てられませんから、まずは団体客の到着し始める10時頃までが勝負かと…(^_^;)
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