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『風林火山』vol.37「母の遺言」

今週は連休明けからどうも本業の方がバタバタしてましたもので、中々記事を書く暇もなくて…。
いっそ次回分で一緒にとも思ったのですが、この週末もまた三連休。この分では同じことの繰り返しになりそうだと、ぼちぼち書き出してはみたものの、イマイチ焦点の定まらない文章になっております m(__)m



 
ところで「母の遺言」のタイトル、確か去年も一昨年もありましたよね。
考えてみれば、いずれの該当役も父親とは縁薄く、母親の影響を強く受けて育ったという点に共通するものがありますし(いわゆるマザコンてヤツですがそう言っては身も蓋も…)、ひょっとすると、この辺りに作品選定の一つのポイントがありやなしや…とか? (^_^;)

それにしましても、今年はアバンタイトルの使い方が時代背景の解説だったり、前回のおさらいだったりと回によってまちまちで、今回のように「いきなり本編」型だと、こちらの視聴準備が整わないうちに(そんな大げさなもんでもありませんが)本題に入ってしまい、上手くテンポに乗りづらいという難点も…。

特に今回は、以後に展開する話の核になるテーマが詰め込まれていただけに、変に別立てなどにはせず、アバンタイトルは省略、初っ端から「疾きこと…」と始めても問題なかったと思うのですが…。あの主題歌&クレジットを見聞きしているうちに、どんどん気持ちが高まって「さあ見るぞー!」とスイッチがオンになる人間からすると、あの中途半端なぶった切り感は非常に気になりました。


とまあ、前置きはこのぐらいにして本題へ。
今回は関東管領vs北条の話をタイトルロールの大井夫人でサンドする形式で、ややもするとどちらがメインディッシュなのかわからなくなりそうなぐらい、北条話の方がより強く印象に残りやすい作りでしたが、とはいえ、そもそもの発端は大井夫人が勘助に語った「晴信は良き父にはなれませぬ」にあったのですよね。

「良き父になれない」→「ならば良き父とは何ぞや?」ということで、上杉憲政-竜若丸、北条氏綱-氏康-新九郎の父子関係を対比して見せようとの趣向かと思うのですが(ついでに長野様の安否を気遣うのに事寄せて真田ファミリーまで登場させるちゃっかりぶりも)、しかし、それにしても、憲政の危機管理意識の薄さには唖然とするばかりで…。「四方を敵に囲まれようわかった。真の味方とはいかなるものか…」って、全然わかってないじゃないですか… (-_-;)

外様を重用して、譜代にそっぽを向かれ、挙句にその外様にまで裏切られ…と、北条さんの御書置の中身を裏打ちするためとしか思えない(爆)ネタを惜しみなく提供してくれた関東管領様。いくら有能な外様でも、嫡男の乳夫&守役に採用するのはかなりの冒険ですからね。代替わりの後は実権を握り得る立場だけに、なるべく周囲から不満の出にくい古参から選抜するのが妥当な所。武田家でも四郎くんはともかく、嫡男の守役には譜代の飯富さんを配していますからね。

もっとも、裏切り者の妻鹿田のこれまでの描かれ方が、ナレの説明が入らなければ「外様」だとわからないほど上杉家中で馴染んでいたので(そんなに印象に残るほど出て来てませんし)、「譜代衆の士気と忠節は衰え、家中はバラバラ…」という例に当たるほどではないような気も…。とりあえず、長野業政の暇乞いの間、やたら怪しい目つきで裏切り予報をビシバシ発令するなど苦心の跡も見えましたが、それ以前にどこかで譜代の愚痴の一つも入れて、微妙な空気を醸し出しておいて欲しかったような…。

しかし、北条絡みのエピソードは「忘れた頃にやって来る…」みたいに飛び飛びの登場ながら(笑)、強く心に残るものが多いですね。これは一話完結的なおさまりの良いストーリー展開による所も大きいでしょうが、それプラス、義を捨てての裏切りの対比として、かつて忠と孝の板挟みに苦しみながら河越夜戦で散った本間江州の件も思い起こさせるなど、根底に流れるものはしっかりと繋げてあるのが、いっそうの味わい深さを演出しているように思いますね。

そして、また、それを必要以上に格好よく見せてしまう北条氏康殿が…。
あまりに素敵過ぎて、勘助も「なぜこの氏康を主にしなかったのか?」と不思議に思えるほどなのはいかがなものかと思いますが、これは晴信に人間味を追求するあまり、意外に器の小さな人物のように映ってしまっているせいもあるでしょうね… (^_^;)

まあ、考えようによっては、氏康も「酒は朝にしか呑まない」とか、何かと言えば「義」にこだわり過ぎるような「潔癖さ」をもっと誇張するなどして、「こういう堅苦しい上司は御免蒙る!」という方向へ持って行けてれば、小事にこだわらない晴信と好対照の図式になり得たようにも思えますし、案外、当初の狙いはその辺だったのではないかと思われるフシもなきにしもあらずで…。

ところで、氏康殿(の中の人)と言えば、今やすっかり貫禄がついてしまっていて、とても想像がつきませんが、お若い頃はそれは美しい女形でらしたのですよね。私は『御家人斬九郎』(第三シリーズ)の「美人局(つつもたせ)」で拝見したのが最初だったと思うのですが、特に芸者に化けて舞い踊る姿は圧巻で、蔦吉姐さんも思わずやっかむほどのいい女っぷり(笑)。その時のインパクトがとにかく強烈だったもので、今の男前な氏康殿には多少の違和感も…(^_^;)

『御家人斬九郎』シリーズは、地上派での再放送は難しいかもしれませんが、CSの時代劇専門チャンネルではちょくちょく放映されていますので、もし機会がござりますれば是非一度ご照覧あれ!


と、何か横道に逸れてしまいましたが(汗)、最後にとうとう旅立たれた大井夫人。
「母の遺言」というお題だけに、もっとたっぷりと口説を拝聴できるのかと思いきや、前回の由布姫に、今回の勘助・三条夫人と、特に晴信と縁の深い三人とは存分に別れを惜しまれたものの、当の晴信さんとは結局何もなし(てか、最後の最後まで同じ画面に収まることもなく…)。あるいは、今わの際に「あなた様の御心だけが見えませぬ」とつぶやいたのは、不動明王=晴信に遺すべき言葉だけは見つからない…という意味だったか?

晴信にかつての信虎の姿を重ねて、因果応報の習いにより、晴信もまた嫡子の太郎との対立は避けられないのではないか…との懸念は、母親だからこそわかる直感のようなもので、これまでの予知合戦(?)とは一線を画すもの。それだけに、勘助が密かに抱く黒い意図も、ここで初めて浮き彫りになった方が、衝撃もより大きかったのではないかという気も…。

そもそも、人知れず張り巡らされていてこそ謀略と言えるのであって、誰でもちょいと考えれば気がつくようでは、その値打ちもグッと下がろうというもの。何食わぬ顔で三国の盟約を締結させ、後で「実はそんな企みを考えていたのか…」と思わせた方が、断然、策士としての株も上げられたでしょうし、それを聡く見抜いて「由布姫も四郎も諏訪にいてこそ…」と暗に釘を刺す大井夫人の言葉にも、いっそう重みが加わったことと…。

さらにもっと踏み込めば、その大井夫人の言葉によって、勘助も改心というか密かなる野望を打ち砕かれて、「四郎様大事」から広く武田家全体のことに思いを至らせるようになり、しかし、かつて自分が仕掛けた策略が意に反して暴走し始め、武田家を滅びの道へと向かわせることになる…。
せっかくここまで対面の時を引っ張ったのなら、この二人の邂逅そのものに、それぐらい重要な意味を持たせて欲しかっったですし、ましてやアバンタイトルで終了など、いくら何でも扱いが軽すぎだと思いました… (-_-;)
by kiratemari | 2007-09-21 01:06 | テレビ | Trackback | Comments(0)

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