愛し君に出会う旅 vol.2- 般若寺

バスに揺られることおよそ15分で「般若寺」の停留所に(バス代:180円)。
が、真ん前がお寺というわけではありません。「般若寺」と書かれた標識(写真に撮るのを忘れました)に従い住宅街に分け入ること5分足らず、やがて重厚な佇まいの楼門が現れました。
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国宝にも指定されるこの楼門が入り口かと思いきや、その前には木製の柵が設けてあってここをくぐること叶わず(中からはくぐれますよ)。正規の入り口は楼門に向って左手側へ少し回り込んだところにありました(拝観料:400円)。

さて、境内に入ってすぐに目に入るのは有名な石仏群(背後を彩るのは黄色い山吹の花、手前は牡丹など)。
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「般若寺」といえば「花の寺」、というより「コスモス寺」として知られ、オン・シーズンには多くのカメラ愛好家が集まって来るようですが、今の時期も山吹に八重桜、色とりどりの牡丹など、それなりに見どころもあるにもかかわらず、人影はまばらどころか…、ほとんどなし! (^_^;)

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   ↑濃いピンクが華やかな八重桜

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   ↑境内から見る楼門(国宝)

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   ↑右手に見えるのは十三重石宝塔(重要文化財)

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   ↑本堂(奈良県指定文化財)


開創は飛鳥時代というこの古刹は、治承4年(1180)の平家による焼討に遭い、伽藍は礎石のみを残して全て灰燼に帰するという惨事に見舞われました(今ある堂舎は鎌倉時代以後の再建)。

夜いくさになって、暗さは暗し、大将軍頭中将(蔵人頭&近衛中将の官職に就いていた重衡のこと)、般若寺の門の前にうったって、「火をいだせ」と宣ふ程こそありけれ
    ~ 平家物語巻五「奈良炎上」より ~


早朝から繰り広げられた合戦は日が落ちた後までもなお続き、暗がりでの戦闘時の常套手段に習い、周辺の民家などに火を放って松明代わりにしようとしたところ、折からの激しい風に煽られて瞬く間に方々へと飛び火し、その炎は東大寺・興福寺など由緒ある仏閣を焼き尽くすこととなります。

「奈良坂」と呼ばれる市街地より山の手に立つ般若寺は、現在は住宅街に埋もれ周囲を見渡すことはできないものの、先ほどのバス通りまで出ると、東大寺の屋根をはっきりと見てとることができます。あるいは南都攻撃の際に重衡はこの辺りに立ち、運命のあの号令を発してしまったのでしょうか。
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戦略上やむを得なかった不可抗力。
横暴極まりない南都大衆らを戒めるための鉄槌―。

南都攻撃の総司令官の立場にあった重衡にも、それなりの言い分はあったことでしょうが、しかし、この焼き討ちによって世の人心は完全に平家の元を離れ、以後、文字通り坂道を転がるように破滅へと向かった歴史的結果から見ても、これは史上最大最悪の大失態と言わざる得ないでしょう。

そして、図らずも「仏敵」という終生消えぬ烙印を背負った重衡の真の意味での終焉の地もここ般若寺ということになります。
壇ノ浦で平家が滅亡して後、南都の大衆に渡され、木津川の河畔で処刑された重衡の首は、ここ般若寺の大鳥居に懸けられ梟首(さらし首)されたのだとか。

その頸をば般若寺大鳥井の前に釘づけにこそかけたりけれ。
治承の合戦の時、ここにうったって伽藍をほろぼし給へる故なり。
    ~ 平家物語巻十一「重衡被斬」より ~


現在の般若寺に大鳥居は現存せず、往時の面影を偲ぶよすがはありません。
ただゆったりと、のどかに流れる時に身を浸す心地よさ…、そんな素朴な味わいの深い癒し系(笑)のお寺でした。


ということで、般若寺はこのくらいで切り上げて、市街地を目指しバス通りをそのまま徒歩で南下。なだらかな下り坂を15分ほど歩くと「史跡東大寺旧境内」の石碑の立つ「転害門」に行き当たりました。
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ということで、これより東大寺に向います(下の写真は西北側の大仏池より望む大仏殿)。
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☆Next → 愛し君に出会う旅 vol.3- 東大寺

☆Back → 愛し君に出会う旅 vol.1 -序



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by kiratemari | 2006-05-07 11:55 | Trackback | Comments(2)
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Commented by えりか at 2006-05-07 22:21 x
 手鞠さん、今晩は♪

 旅行記、楽しく拝見させていただいています。

 重衡さんと般若寺、深い因縁で結ばれていたのですね。私も奈良に行く機会があったらぜひ般若寺を訪れて、重衡さんを偲んでみたいです。では、旅行記の続きも楽しみにしていますね。
Commented by 手鞠 at 2006-05-07 22:35 x
えりかさん、こんばんは~♪
そうなんですよ。これまで意外と見落としていましたが、重衡にとって般若寺は転落人生の始まりであり、真の意味で終焉を迎えたともいえる実に興味深い場所だったのですよね。

ほんの思いつきで立ち寄ってみたのですが、本当行ってよかったです。えりかさんも、奈良にお越しの際には是非に!
オススメはやはりコスモスの季節でしょうが、人出を考えると、むしろ、今頃の時期の方が情緒があって最適かもしれませんね。

このシリーズはまだまだ続きますので、どうぞお楽しみ下さいませ。

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