雪組全国ツアー公演 『銀の狼』

昨日、梅田芸術劇場の雪組全国ツアー公演初日を観劇。
とにかく、客席の熱気の凄いの何の…。
しかし、その熱狂ぶりとは裏腹にどこか覚めた目で舞台を見ている自分が…。
今のヅカ、かなりヤバイことになってませんか?



 
毎公演新作が基本の宝塚ですが、時折、過去の作品を再演ということもあり、タイムリーな話としては、来年早々に、伝家の宝刀『ベルサイユのばら』の2組連続公演が決定されています。

そして、今回の雪組全国ツアー公演の前物のお芝居『銀の狼』も、1991年に月組で初演されたものの再演。《作品の詳細は公式ページを参照のこと》
今から14年前の作品になりますが、それをバッチリとライブで見ていた自分は…(^_^;)

当時、フェアリータイプの愛くるしい(?)キャラが売りだった月組トップスター涼風真世に、あろうことか「殺し屋」の役を当て、二重三重のドンデン返しが待ち受けるなど、ヅカ作品では類を見ないサスペンス色の強さ・ストーリーの複雑かつ難解さに、初演時の評価は賛否を二分しましたが、一方で、その楽曲の素晴らしさは歌手・涼風の歌唱力も相まって当時から高評価を得ており、また、その後、さいとうちほさんによる劇画版が登場したりもして(つい先頃文庫化も)、いつしか、「伝説の名作」の部類に入るようになったのは、時代の変化によるものか…、はたまた、近年の駄作群のおかげか…(汗)。

いずれにせよ、今回の再演版を見てまず思ったのは、「正塚ワールド」と称され、ディープなファン層を獲得するヅカ異端(?)の演出家正塚晴彦氏の作品群の中でも、特にそのエッセンスが凝縮されている作品だということ。

再演物につき、以下ネタばれの配慮なしに書きますが、ここ最近の正塚作品の傾向では、主役の「銀の狼」ことシルバが、真の仇ジャン・ルイを刺し殺して復讐を成し遂げた時点で終わりそうな所を、その後に、シルバの友であり庇護者であったはずのレイ(初演時はあの天海祐希が演じた)が正真正銘の仇として現れ、悲しい対決へと至るもう一山も用意されていて、それが観終わった後に、何ともいえない複雑な余韻を残します。

昨今はどうも、単なる達成劇に終始し、無理にハッピーエンドに持ち込もうとする氏の作風に、正直、ぬるさ・物足りなさを感じていた私としては、改めて「これぞ正塚作品!」との思いを強くすると共に、こういうタイプの新作を是非ともまた書いて欲しいと切に願うものです。


さて、冒頭に書きました、この公演を見ての危惧……それは、実は作品よりも演じる生徒さん達の方なのですよ。

先に、一つお断りしておきますが、私は初演時の月組&その演者達に特に思い入れがあるわけではありません。むしろ、涼風さんについては歌がうまいだけ(もっと突っ込むと声が良いだけ)、天海のユリちゃんはビジュアルだけ、娘役の麻乃さんは小柄すぎて頼りない、久世さんはうまいが地味すぎる…と、はっきり言って、当時の認識としてはかなりの低評価。この『銀の狼』についても、作品自体は気に入っていましたが、どちらかといえば、他組でやった方が良かったのでは?と思ったぐらいで…。

ところが、あれでも、いかに素晴らしかったか…と思わせられた今回の再演版。
もちろん、演者それぞれに当て書きされた初演版が勝って当然の部分もありますが、それを差し引いたとしても、ここ十数年来の全体的なレベル低下を改めて突きつけられたようで、愕然とするものがありました。

  《役名》        《再演版》          《初演版》
 シルバ・・・・・・・・・・・・・朝海ひかる(15年目) ― 涼風麻世(11年目)
 ミレイユ・・・・・・・・・・・・舞風りら  (11年目) ― 麻乃佳世( 4年目)
 レイ・・・・・・・・・・・・・・・・水 夏希  (13年目) ― 天海祐希( 5年目)
 ジャン・ルイ・・・・・・・・・音月 桂  ( 8年目) ― 久世星佳( 9年目)

こうして主要な配役を並べてみても、キャリア的には軒並み初演時を上回っていながら、舞台から受ける印象は、今回の再演版の方が明らかに若い、というより幼い…。
その中にあって、ミレイユはさすがに年の功(失礼)。より人妻らしい落ち着きが見られ、彼女単体で見る限りは役柄によく合っていると思うのですが、一方で、その落ち着きが、かえって彼女と絡むシルバやジャン・ルイを幼く見せてしまっているようにも感じられて…。

ここで引き合いに出すのも何ですが、大河『義経』と言い、アイドル的なスターが真ん中に来ると、周りに配する人達とのバランスがとても難しいのは確か(もっとごついタイプの義経ならあの静ちゃんも許容範囲になる?)。極端な話、超小顔の主人公の相手に、普通に小顔の娘役を配しても、下手すれば大顔に見えてしまいますからね(汗)。

その意味では、今回のミレイユはシルバをして「護ってやらなければ…」と思わせるほどの危なっかしさには欠け、一人で十分に立って歩いて行ける芯の強い女性に映り、むしろ「シルバのために自分がそばにいてやらなければ!」という印象すら受けました。しかし、そういう感覚も相手役が変れば、また違ったものとなるでしょうし、結局の所、ドラマにしても舞台にしても、一番大事なのは、個々の特性よりも、まずは全体の役割を見渡してのバランスなのではないかと思います。

しかし、演技以上に厳しいと感じたのは、実はショーも含めた歌唱力の低下。
劇場の音響効果の問題もあるでしょうが、とにかく、歌がきちんと聞き取れないというのはどうも…。

今回は、初めてソロをもらったという下級生の抜擢も多数あり、経験不足も加味すればある程度は仕方のない所ですが、それにつけても気がかりは、ホームグラウンドの大劇場などでは、マイクのボリューム・アップやエコーを始め、音響担当の苦心のテクニックによって、いつもかなりの下駄を履かされているのではないかという疑い。設備的に十分でない借り小屋では、いつものようには誤魔化しもきかず、思わぬ形で真価を露呈してしまう…ということもあるのではないでしょうか。

それと、昔は一芸に秀でた人には、路線(=トップ候補)か否かを問わず、歌であれダンスであれ、おいしい場面を与えられることもままありましたが、昨今は、路線以外はそういう機会が激減傾向にあり、これが生徒のヤル気を殺ぎ、実力者の早期退団に繋がっていることも見落とせません。

今回の『銀の狼』にしても、初演時には、当時「芝居の月組」と呼ばれたのにふさわしく、脇の脇まで細かい芝居をする人が多かったですし、それが、全体のモチベーションを底上げする力になっていたようにも思います。

充実の舞台には、脇役の充実こそ大切。
適材適所の法則にのっとれば、そう難しいことではないはずなのですが、昨今の路線系偏重の姿勢は、作品の構成段階で既に多くの制約を設けてしまい、その結果、非常に中身の薄い駄作の連発にも繋がっているようで、長期的に見ると将来に危ういものを感じざるをえない…。なぜか、そんなことをあれこれと考えさせられた今回の観劇でした。

なお、この公演は今月末の千秋楽までまだまだ続きますが、どうか、回を重ねるごとに少しでも進化が見られるようにと祈るばかりです。
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by kiratemari | 2005-11-06 19:57 | エンターテイメント | Trackback | Comments(0)
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