人気ブログランキング | 話題のタグを見る

落日に散る!―『義経』vol.25「義仲最期」

とうとう、この時が来てしまいましたね。少々暑苦しい演技には苦笑もしましたが、やはり、これが最期…と思うと、感慨深いものもあります。

……が!!! 何でこのクライマックスを番組のど真ん中に持ってくるかな??? 
そんなに、義仲殿の死に様を視聴者の記憶に残したくないわけ? 
この扱いはどう見たって「義仲最期」<「義経と常盤の再会」
いっそタイトルも「母との再会」とでもしてくれれば、まだ許せるものを…(怒)。

元々、義仲話で3週も引っ張ること自体に無理があって、うまく整理して繋げば2話で十分収まる内容。
要は45分(正味は40分くらい?)の枠内での「起・承・転・結」の配置の問題で、以前にも指摘したことがありますが、このドラマでは「転」の部分で終わることが多いのですよね(特に目玉になるエピソードがある時に顕著)。

一気に「結」まで持って行けば、少々のアラは勢いで押し切ることもできるものを、一旦、ブチッと切られた形で一から再スタートとなると、気持ちが高まる前に早々とクライマックスを迎え、乗り切れないまま次の展開へと進む…の繰り返しで、せっかくの目玉もどうしても流れがちに…。

今回の場合でも、「義仲が討ちとられた!」という報告を聞いて、少し苦い思いに浸る義経…という感じで終わらせておいて、常盤との再会は、一ノ谷への出陣前夜ということで、次週の終盤に持って来た方が、もう少し盛り上がったのではないかと思います(それだと、静ちゃんの戦勝祈願の舞が霞むって?)。




 
さーて、予想通りにスルーしてくれた「宇治川の先陣争い」(そりゃあ、あんな浅~い河原でやるもんじゃないもんね)。
割合早い段階から梶原景季を出してきた所で、少しは期待した時期もありましたが、鎌倉出立前に「いけずき」「するすみ」(いずれも馬の名前)が出て来なかった時点で、早々に諦めていたので、それほど落胆もしませんでしたけど…。

とはいえ、「宇治川」についての認識が、通り一辺の合戦で済まされたのはいかがなものか?とも思われるので、少し突っ込んでおきますと、そもそも「宇治川の合戦」と呼ぶからおかしくなる面もあるのですが、実の所、ここはチャンチャンバラバラよりも、この川の「急流」との戦いがメイン。

宇治においでになったことがある方なら、ご存知のことと思いますが(今と昔では多少事情も違うかもしれませんが)、あの辺りはけっこう水深もあって、そこに上流から押し寄せて来る急流、しかも、川底には乱杭を打ち大綱を張ってあったと言いますから、これに馬の足が引っかからないように気を配りながらの渡河では、とても、川の真ん中で斬り合いなんぞしている場合ではなくて…。

だいたいが、相手も、橋板をはずしておけば、ちょっとやそっとでは渡れないと踏んで、こういった作戦に出ているわけですから、わざわざ自分達の仕掛けた罠に飛び込むバカもいませんし…(せいぜい対岸から弓矢を射るぐらい)。

『平家物語』流で行くなら、ここでの義経の見せ場は、戦働きなんかよりも、この急流を前にして取った戦略。
尋常では渡れそうもない川の流れに、「もっと下流へ迂回するか?」、「水かさが減るのを待つか?」と諸将に問い、そのように尋ねられれば、武者のプライドにかけて「何を! こんな急流など恐るに足らず!」となり、士気も上がる!と計算しての知略家の一面を披露する場…とでも言えばいいでしょうか。

ドラマの冒頭の説明でも、「搦め手」の重要ポイントに「スピード」というのがありましたが、機先を制するには、このまま宇治川を突っ切るのがもちろん最善で、「たとえ無理でもここを行くしかない!」という猪突猛進型が義経流采配。
実際、一旦、川を渡られてしまえば、もはや防御のしようもなく、志太義広を大将とする義仲軍は、東西南北、散り散りに逃げ去ったと『玉葉』も記しており、こういう「不可能」を「可能」に変えるが如き戦略は、今後の一ノ谷・屋島の急襲にも繋がって行くことになります。


さて、ここで、迎え撃つ側―京の義仲に目を転じますと、この頃、内々に進められていたらしいのが「平家」との和睦という秘策。
これには、先方もそこそこ乗り気で、平家が入京して来て法皇の身柄を預り、義仲は自ら近江に向かい鎌倉勢を追い払う…という具体案まで上がっていたようなのですが、土壇場になって、「義仲が法皇を伴って北国へ向かうらしい…」とのマル秘情報を入手した平家方が「約束違反だ!」と抗議して、あえなく交渉も御破算…となった模様です(from 『玉葉』)。

また、この間には、河内の長野城に逃げ込んでいた行家の追討に、樋口兼光を差し向けており(行家が反旗を翻してのものか、裏切り行為に対する報復かは不明)、そうでなくとも、長い在京の間に激減した兵力を行家対策にまで削がれ、その隙を突くように、鎌倉の大軍来襲という緊急事態が発生してしまったわけですから、大手=勢田(瀬田)に今井兼平、搦め手=宇治に叔父の志太義広、そして、院御所の守備に義仲自身と、残る兵を三分割したのではいずれも小勢、数で圧倒的有利を誇る鎌倉の大軍に、とても太刀打ちできるものではありませんでした。

宇治川の強行突破により、予想以上の速さで京に侵入した義経軍に、法皇の北国連行計画も阻止されると、もはやなすすべもなく、六条河原での小競り合いにも多勢に無勢では歯が立たず、ついには京を捨てて敗走。落ち行く先は北国と思われましたが、大方の予想に反し、義仲が向かったのは兼平のいる勢田。あえて大軍の待ち受ける危険な大手へと向かったのは、やはり、乳母子の身を案じてのことだったのでしょう。

その兼平も以心伝心、主の身の上を思い京に引き返してきて、主従は大津の打ち出浜で行き会ったとは『平家物語』が誇る名場面の一つ。
さらに、巴との別れ、「日頃は何とも思わぬ鎧までもが…」から額を射抜かれる義仲、兼平の壮絶な自刃も、全て『平家物語』にあるエピソードながら、例によって、ドラマ仕様にショボイ改変が施されていたのには、今回はあえてツッコミません(それにしても、もうちょっとうまく処理できなかったものですかね…)。


と、ここでまた、少し話が前後してしまいますが、京に入った義経主従は、救出を待ちわびる ならぬ 後白河院 の許へ急行。
が、いくら何でも、義経のみならず郎党達までもが、法皇の居所にズカズカと土足で乱入というのはいかがなものでしょう。まあ、法皇様も即効で落としたその美貌(?)があれば、何をしても許されるんでしょうけど…(呆)。

その後、法皇様の御前で名乗りを上げた鎌倉武将の面々は、河越太郎重頼、安田三郎義定、佐々木四郎高綱、畠山次郎重忠、渋谷庄司重国、そして梶原源太景季。まさか、こんな所で佐々木や畠山の名を聞こうとは…。お顔もろくに映らなかった所を見ると、今回限りのサービスショットということでしょうかね(涙)。
しかし、これまでの流れを見るに、梶原景季をそのまま畠山重忠にシフトしても問題なかったような…。馬牽き話にも絡めて、その方が自然ですし、何より、宇治川の先陣争いにいらぬ期待を持たせずにも済んだでしょうに…。

それはさておき、この法皇の御前での名乗りついては『平家物語』にも見られますが、河越重頼の名がなかったり、渋谷重国も子の重資になっているなどの異なる点もあり、また、同様の記事は『吾妻鏡』にもあるものの、こちらでも、安田義定の名がなかったり、蒲冠者範頼も同行していたことになっているなど、やはり異同点があります。

また、その『吾妻鏡』について、少し気になるのが、義仲追討の一連の動きの中で、鎌倉軍の総大将として、常に範頼・義経の両人の名を連記してあるのですが、これに対し、『玉葉』では義経の名しか見受けられず、よって、当時の認識としては、範頼<義経 であったのではないか?と見る向きもあるようで(少なくとも朝廷サイドでは)、あるいは、範頼の武功を引き上げるために(逆の意味で義経の評価を落とすため?)、『吾妻鏡』では、範頼の名をわざわざ書き加えたという可能性もなきにしもあらず…と思われます。

ところで、『平家物語』でも『吾妻鏡』でも、なぜか蚊帳の外に置かれながら、より信憑性の高い『玉葉』に、燦然(?)とその名を残す一人の武将「加千波羅平三」(これは万葉仮名で、恐らく、聞き書きした兼実さんは、咄嗟に、どんな字を書くのかわからなかったのでしょう)。
まあ「平三」でピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのまま音読みすれば「カチハラ」つまり「梶原平三景時」その人のことで、「東軍一番手、九郎軍兵」との前置きがありますから、搦め手の義経軍にいたことは明白。

そもそも息子の景季が搦め手で、父親の景時が大手というのも奇妙な話で、一族郎党を引き連れての出陣では、父子が別行動をとるというのはあまり見られませんからね。どうしてこういう形をとったのか…(単に景時役の人がこの時のロケに参加できなかったから…とか言わないよね?)。


う~ん、良くも悪くも、前半の畳み掛けるような流れに対し、後半はまた、いつものようにグダグダのんびりモード(これが次週も続くかと思うと、ちょっとウンザリ…)。
義仲退場ですっかりテンションが下がり、ただボーッと眺めているだけの状態でしたが、それでも気になった点を少し挙げておくと…(やっぱり突っ込まずにはいられない!?)

まだ義仲も死んでないのに、ご焼香の準備にいそしむ法皇様。
エッ? あれは焼香じゃない? だって、煙がやたらとモワオワと立ち上っていたし…(笑)。てっきり、義仲に化けて出て来られたら困るので、成仏するように法要でも営むのだとばかり… (^^;)

義経様と運命の赤い糸で結ばれていたのは、静ちゃんではなく、あの「福原の屏風」だったわけね(爆)。あれがヒロインだとすると、お見事なすれ違い劇だわ~。
ここまで引っ張るからには、必ずや「感動のご対面!」もあるものと予想しますが、はてさて、それはいつのことになるやら…(こういう伏線には思いっきり力を入れてるんだろうね…)。

そして、極め付きは、やっぱりコレ!
常盤との再会を果たし、その若武者ぶりに「この姿を…」と言葉を詰まらせる母に、「清盛様…」と言い出す義経って…???
これをまた否定もせず、懐かしげに思い返している常盤も…???
すっかり忘れ去られている義朝さんの立場はどうなるんでしょう?(草葉の陰で泣いてますよ~)

結局、ここに、このドラマの諸悪の根源アリ! そして、清盛死すとも、この設定が生き続ける限り、今後も、果てしなく迷走を続ける…というわけですね (~~;)
by kiratemari | 2005-06-29 20:01 | テレビ | Trackback(1) | Comments(6)
Tracked from えりかの平安な日々 at 2005-06-29 21:53
タイトル : 大河ドラマ「義経」第25回&巴御前のその後
 大河ドラマ「義経」第25回の感想です。  義経がいよいよ公式に都入りしましたね。そして、後白河法皇ともご対面。 今後、義経の運命を大きく変えることとなる法皇さまですが、二人の対面はなかなかドラマチックに描かれていて良かったです。ただ、史実では義経が法皇さまを救い出すなんてことはあり得なかったと思うのですが…。義仲は都を逃げ出すのに精一杯で、法皇を閉じ込めるなんていう小細工をやっている暇はなかったと思います。まあこれも、ドラマを面白くさせる演出なのでしょうね。  「都育ちだけあって、義経は義仲と違っ...... more
Commented by えりか at 2005-06-29 21:49 x
 手鞠さん、今晩は♪「義経」の感想、今週も興味深く読ませていただきました。

 義仲の最期の場面がいまいち盛り上がりに欠けた理由の一つは、あの場面を番組の真ん中に持ってきたからなのですね…。確かに、エンディングだったら兼平のあの名ぜりふがなくても感動したかも。

 義経の頭の中には清盛しかないみたいですね。これでこれから平家と戦えるのかと、とても心配です。そろそろ勇ましい義経を観てみたいのですが、当分無理かもしれませんよね。

 では、では、後ほどこちらからもTBさせていただきますね。
Commented by kiratemari at 2005-06-29 22:44
えりかさん、こんばんは~。いつもコメント&TBありがとうございます。

このドラマの義経にとっては、やはり、父親は清盛以外にありえないのでしょうね(秀衡のことすら忘れてそう)。そして、その論理で行けば兄弟(?)になる人々との一戦も、いよいよ近づいてきているわけですが、いったいどういう心境で戦うのか…。まずは、重衡殿との再会が最初のポイントになりそうですね。
Commented by bluecat at 2005-06-30 13:15
手鞠さん、こんにちは!
このドラマは有名なエピはほとんど流してしまう傾向にあるということがはっきりしてきましたね(^_^;)
宇治川の先陣争いもとても有名なエピなのにorz・・・なんのために梶原景季が早くから登場してきたのか、全く理解に苦しみます。
「義仲最期」なんだから、どうしてドラマの最期に持ってこなかったのかもヘンですよね~常盤との再会なんて次回でもいいのに。義仲の最期についてはこれらに比べれば及第点かなとはおもいますが、有名なセリフなしでは、今井兼平の最期の自刃も知らない人からすれば「?」となってしまう危険もありますよね。
Commented by kiratemari at 2005-06-30 19:49
bluecatさん、こんばんは~♪
兼平のセリフカットは痛かったですね。あれはかなりグッとくるのに…。
いくら主役とはいえ、義経も時には狂言回し的な役割に回ってもかまわないんじゃないかな?と思いますね。義仲&兼平の主従の絆の深さを描くことで、それを、義経と郎党達の関係にオーバーラップさせる…ということもできるのに…。

梶原景季については、今の所、存在意義が不明?
爽やかな好青年なのはまあいいとしても、一御家人として見ると、義経に対して、少々下手に出すぎているような…。義経郎党も何だか対等な相手のような態度をとってますし、そういう分をわきまえない所が、そのうち景時パパの不快を招くとか…(笑)。
Commented by nekonezumiiro at 2016-10-24 17:53
手鞠さんこんばんは。後白河法皇役、同じ宮尾さん原作の『篤姫』まで7本の大河ドラマに出ていらした平幹二朗さんが先日逝去されたそうです(合掌)。
 胴丸鎧姿の義経を木曽方の武者と錯覚して怯える丹後局、そっと抱き寄せる法皇…この場面にあった「殺しに参ったか!」の一言が脳裏に焼き付いて離れません。しかも本作と前後してバンド活動を開始していらした夏木マリさん、正直予想外でした。
Commented by 手鞠 at 2016-10-28 22:21 x
nekonezumiiroさん、
すっかり返信が遅くなってどうもすみせん。

平幹二朗さんの急逝には本当にビックリしました。
唯一無二ともいえる強い個性を持たれた俳優さんでしたので、非常に惜しまれてなりません。

それにしても『義経』から11年。
あの当時で既に70歳を越えられていたとは…、改めて驚き入っております。

「きらめきの刹那」 別館  花や史跡の探訪記録や源平&時代物ドラマ話など何でもござれの雑記帳


by kiratemari

ブログパーツ

最新の記事

舞洲 新夕陽ケ丘
at 2022-03-24 21:01
初富士めぐり2022 (2)
at 2022-02-23 19:27
初富士めぐり2022 (1)
at 2022-02-21 21:00
迎春花
at 2022-01-01 08:00
謹賀新年
at 2022-01-01 00:00
摩耶山天上寺
at 2021-12-28 21:14
Merry Christmas!
at 2021-12-24 22:09

リンク

カテゴリ

お知らせ
歴史語り
「きらめきの刹那」関連
書籍
テレビ
エンターテイメント
グルメ
関西探訪
├京都
├大阪
├兵庫
├奈良
├滋賀
└和歌山
旅の記録
├東北
├関東
├中部
├北陸
├四国
├中国
└九州
お出かけ
つれづれ

タグ

(706)
(282)
(159)
(130)
(122)
(111)
(92)
(86)
(63)
(47)
(41)
(41)
(40)
(34)
(23)
(21)
(20)
(18)
(11)
(8)

最新のコメント

壺井勘也
by 辻原俊博 at 21:03
知恩院
by 知恩院 at 21:02
藤原宮跡
by 栄藤仁美 at 20:05
北脇健慈
by 藤原宮跡 at 20:05
ちゃんちゃんさん、こんに..
by 手鞠 at 15:35
 階段の紫陽花が見事です..
by ちゃんちゃん at 08:10
ちゃんちゃんさん、こんば..
by 手鞠 at 20:30
今年は行かれてたのですね..
by ちゃんちゃん at 16:12

最新のトラックバック

以前の記事

2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
more...

検索