『平清盛』vol.4「殿上の闇討ち」
さて、今回は『平家物語』にも同名の章段があるエピソードをモチーフにした、しかし内容は完全なオリジナル仕様。そこの所が原典に愛着を持つ方々には大きな違和感になったのではないかと…。
まずは原典の『平家物語』にて語られる「殿上闇討」をかいつまんで記しておきますと…
鳥羽上皇勅願の得長寿院を建立した褒賞として、忠盛に清涼殿の殿上の間への昇殿が許され、その初昇殿となった舞台が五節豊明りの節会…という所まではドラマと同じですが、その後の展開が…
(1) 忠盛、闇討ちの事前情報を入手して参内
(2) 殿上人の見ている前で刀を抜いて鬢(耳の際の髪)に当ててわざと見せびらかす
(3) 殿上の間の小庭には郎党の家貞(梅雀さん)が待機
(4) 忠盛、御前で舞を披露するも、嫌がらせを受ける
(5) 忠盛、我慢ならず途中で退出し、去り際に刀を預け置く
(6) 節会終了後、殿上人らが忠盛の抜刀と郎党待機を非難
(7) 鳥羽院の喚問に、忠盛は当日帯びていたのは銀箔を貼った木刀であったことを既に預け置いていた刀で証明。その用意周到さを却って院に賞賛され、家貞の件も主人の身を慮った武士としては当然の行為と不問に付される。
とまあ、こんな所でしょうか。
抜刀して威嚇するという行為で相手の機先を制して闇討ちを未然に防止し、その刀も本身ではなく細工を施した木刀だったという二段落ち。
武家らしい豪胆さと公家的な小賢しさを併せ持っていた平忠盛という人物を語るものですが、ドラマでは最後の落ちの部分が清盛のみが知るという形でしたので、殿上人らをぎゃふんと言わせる「してやったり!」の感はやや薄まってしまいましたね。
しかも、その闇討ちの下手人を源為義直々に担わせるとは…。
せめて郎党の鎌田通清あたりに実行犯を任せた方が無難でしたが、源平の棟梁ガチンコ対決にドラマ的な盛り上がりを期待しつつ、双方の親子確執にもケリを…と一石二鳥を狙った目論見でこうなったのでしょうね。
しかし、いくら摂関家のバックアップを信じてとはいえ、源氏のトップが自ら汚れ仕事に手を染めるのはやはり奇怪ですし、北面の武士である清盛はともかく、無位無官の義朝があの場に無断で侵入できてしまうのも奇妙。
こういう無茶な設定でいくら迫真の演技を見せられても、どうしてもその中に入り込めない視聴者も少なくないことを製作者側は果たして自覚しているのか…。いや十分に自覚した上での冒険というならそれはそれで結構なのですが、どうも「この程度なら…」と甘く見てのオイタのような気がして今後の先行きに少々不安も感じております。
もし、今回の内容をなるべく変えずに無難にやろうとするなら…、
(1)忠実から圧力をかけられた為義の苦衷を慮った通清が独断で闇討ちを果たすべく潜入。
(2)それを察した息子の正清(次回から登場の予定)の知らせで義朝も内裏に急行。
(3)北面の武士として警備に当たっていた清盛をつかまえて事の仔細を告げ、佐藤義清の協力も得て二人で現場へ。
(4)闇討ちは抜刀した忠盛の威嚇で未遂に終わり、「為義殿に伝えよ」という形でドラマ通りの講釈へ。
(5)義朝は通清を連れて帰り館で(内裏の門の外でもいいけど)為義と和解談義。
(6)清盛は夜勤明けに忠盛と和解。
だいたいこんなもんでしょうか。
これでもまだいろいろ苦しいですけど… (^_^;)
とまあ、最初に少しキツ目のダメ出しを入れときましたが、ドラマ自体は結構楽しんで見ております。
毎度「三歩進んで二歩下がる」的で(爆)、ひどくまどろっこしいながらも清盛に少しずつ成長の跡が見られるようになって来ましたし、これまでバラバラに進んでいた平家・源氏・王家・摂関家が相互に絡み合い始めて、どんどん世界観にも厚みが増して来ているように感じられますから。
初めはどうも言葉足らずで説明不足とも思われたことのいくつかは、後から別の機会に盛り込みながら埋めて行っている部分も結構ありますし、一般に馴染みの薄いこの時代の背景をなるべく視聴者側の負担にならない範囲で少しずつ紐解いて行こうという気遣いが偲ばれる脚本になっていると思います。
ただ、その気遣いがこの時代にそれなりの知識を持つ人には少々仇になっているかとも…。先々の展開を知っているからこそ、あれがない、これがないが気になり、どうしても結論を急いでしまうのですよね。
まだ全50回のたかだか4回が済んだ所。
ノベライズからのネタバレを少しだけしておきますと、まだまだお子ちゃまで恐いもの知らずの清盛もやがて妻を持ち、子を持つにつれ次第に恐れを知る大人になって行きますし、今は奇行が目につく鳥羽院&待賢門院パートも非常に切ない落ちが待っています。このまま「永遠のすれ違い夫婦」で終わらせてもよさそうなところですが、特に待賢門院というキャラに愛情を持ってらっしゃるのでしょうね。
また、巷では可哀想コールも起こっているらしい(?)為義さんにしても、私から見ればすごく愛されているキャラだと思いますよ。不器用だけれど実直で愛情豊かな子煩悩パパ。彼にとって出世を棒に振ることより、最愛の我が子と断絶してしまうことの方がずっとダメージが大きいのだろうなとの想像も働かせます。
私だったら…、汚れ仕事は全部手下におっ被せて、義朝への釈明も一切させず和解もさせず、こちらも「永遠のすれ違い父子」で最後まで通すような、そんな鬼設定にもしかねませんからね (^_^;)
途中経過にどうも目に付く問題点が多すぎて、せっかくのオチにたどり着く前に視聴者が遠ざかってしまうようなちょっと残念な傾向になって来ていますが、ここまでどうにか脱落せずに着いて来られた方々は、とにかくもうしばらく付き合ってみて下さい。
でも、次回、次々回の海賊パートがまた高いハードルになるかも… (^_^;)
まずは原典の『平家物語』にて語られる「殿上闇討」をかいつまんで記しておきますと…
鳥羽上皇勅願の得長寿院を建立した褒賞として、忠盛に清涼殿の殿上の間への昇殿が許され、その初昇殿となった舞台が五節豊明りの節会…という所まではドラマと同じですが、その後の展開が…
(1) 忠盛、闇討ちの事前情報を入手して参内
(2) 殿上人の見ている前で刀を抜いて鬢(耳の際の髪)に当ててわざと見せびらかす
(3) 殿上の間の小庭には郎党の家貞(梅雀さん)が待機
(4) 忠盛、御前で舞を披露するも、嫌がらせを受ける
(5) 忠盛、我慢ならず途中で退出し、去り際に刀を預け置く
(6) 節会終了後、殿上人らが忠盛の抜刀と郎党待機を非難
(7) 鳥羽院の喚問に、忠盛は当日帯びていたのは銀箔を貼った木刀であったことを既に預け置いていた刀で証明。その用意周到さを却って院に賞賛され、家貞の件も主人の身を慮った武士としては当然の行為と不問に付される。
とまあ、こんな所でしょうか。
抜刀して威嚇するという行為で相手の機先を制して闇討ちを未然に防止し、その刀も本身ではなく細工を施した木刀だったという二段落ち。
武家らしい豪胆さと公家的な小賢しさを併せ持っていた平忠盛という人物を語るものですが、ドラマでは最後の落ちの部分が清盛のみが知るという形でしたので、殿上人らをぎゃふんと言わせる「してやったり!」の感はやや薄まってしまいましたね。
しかも、その闇討ちの下手人を源為義直々に担わせるとは…。
せめて郎党の鎌田通清あたりに実行犯を任せた方が無難でしたが、源平の棟梁ガチンコ対決にドラマ的な盛り上がりを期待しつつ、双方の親子確執にもケリを…と一石二鳥を狙った目論見でこうなったのでしょうね。
しかし、いくら摂関家のバックアップを信じてとはいえ、源氏のトップが自ら汚れ仕事に手を染めるのはやはり奇怪ですし、北面の武士である清盛はともかく、無位無官の義朝があの場に無断で侵入できてしまうのも奇妙。
こういう無茶な設定でいくら迫真の演技を見せられても、どうしてもその中に入り込めない視聴者も少なくないことを製作者側は果たして自覚しているのか…。いや十分に自覚した上での冒険というならそれはそれで結構なのですが、どうも「この程度なら…」と甘く見てのオイタのような気がして今後の先行きに少々不安も感じております。
もし、今回の内容をなるべく変えずに無難にやろうとするなら…、
(1)忠実から圧力をかけられた為義の苦衷を慮った通清が独断で闇討ちを果たすべく潜入。
(2)それを察した息子の正清(次回から登場の予定)の知らせで義朝も内裏に急行。
(3)北面の武士として警備に当たっていた清盛をつかまえて事の仔細を告げ、佐藤義清の協力も得て二人で現場へ。
(4)闇討ちは抜刀した忠盛の威嚇で未遂に終わり、「為義殿に伝えよ」という形でドラマ通りの講釈へ。
(5)義朝は通清を連れて帰り館で(内裏の門の外でもいいけど)為義と和解談義。
(6)清盛は夜勤明けに忠盛と和解。
だいたいこんなもんでしょうか。
これでもまだいろいろ苦しいですけど… (^_^;)
とまあ、最初に少しキツ目のダメ出しを入れときましたが、ドラマ自体は結構楽しんで見ております。
毎度「三歩進んで二歩下がる」的で(爆)、ひどくまどろっこしいながらも清盛に少しずつ成長の跡が見られるようになって来ましたし、これまでバラバラに進んでいた平家・源氏・王家・摂関家が相互に絡み合い始めて、どんどん世界観にも厚みが増して来ているように感じられますから。
初めはどうも言葉足らずで説明不足とも思われたことのいくつかは、後から別の機会に盛り込みながら埋めて行っている部分も結構ありますし、一般に馴染みの薄いこの時代の背景をなるべく視聴者側の負担にならない範囲で少しずつ紐解いて行こうという気遣いが偲ばれる脚本になっていると思います。
ただ、その気遣いがこの時代にそれなりの知識を持つ人には少々仇になっているかとも…。先々の展開を知っているからこそ、あれがない、これがないが気になり、どうしても結論を急いでしまうのですよね。
まだ全50回のたかだか4回が済んだ所。
ノベライズからのネタバレを少しだけしておきますと、まだまだお子ちゃまで恐いもの知らずの清盛もやがて妻を持ち、子を持つにつれ次第に恐れを知る大人になって行きますし、今は奇行が目につく鳥羽院&待賢門院パートも非常に切ない落ちが待っています。このまま「永遠のすれ違い夫婦」で終わらせてもよさそうなところですが、特に待賢門院というキャラに愛情を持ってらっしゃるのでしょうね。
また、巷では可哀想コールも起こっているらしい(?)為義さんにしても、私から見ればすごく愛されているキャラだと思いますよ。不器用だけれど実直で愛情豊かな子煩悩パパ。彼にとって出世を棒に振ることより、最愛の我が子と断絶してしまうことの方がずっとダメージが大きいのだろうなとの想像も働かせます。
私だったら…、汚れ仕事は全部手下におっ被せて、義朝への釈明も一切させず和解もさせず、こちらも「永遠のすれ違い父子」で最後まで通すような、そんな鬼設定にもしかねませんからね (^_^;)
途中経過にどうも目に付く問題点が多すぎて、せっかくのオチにたどり着く前に視聴者が遠ざかってしまうようなちょっと残念な傾向になって来ていますが、ここまでどうにか脱落せずに着いて来られた方々は、とにかくもうしばらく付き合ってみて下さい。
でも、次回、次々回の海賊パートがまた高いハードルになるかも… (^_^;)
by kiratemari
| 2012-02-02 22:55
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