安宅の関址

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さて、岐阜から東海北陸道で日本海側の富山へ抜け、次いで北陸道を西へ向い石川県の小松市へ。先だってのGWの時に信州からの帰途、倶利伽羅峠までが精一杯でタイムオーバーになってしまった「安宅の関」をようやく訪ねることができました。



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もしかしたら夕焼けも? 期待のできそうな空模様でしたが、海面に目を移せば時折大波も押し寄せる荒れ模様。それでも夏休みに入っていることもあり、波打ち際で戯れる人影も結構ありました。



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そんな海岸べりに建つ関所を模した門。そして、傍らには与謝野晶子の歌碑。
明治の歌人与謝野晶子は夫の鉄幹と共にお隣の安宅住吉神社に参拝し、その折にこの地にちなんだ短歌を何首か残したそうで、これはそのうちの一首
「松たてる 安宅の砂丘 その中に 清きは 文治三年の関」
という歌が刻まれています。




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そして、これはもうご説明するまでもないと思いますが、「勧進帳」のクライマックスを再現した銅像。土台の所に刻まれている「勇仁智」の文字は、義経の「勇」気、富樫の「仁」情、弁慶の「智」恵を示しているそうです。




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弁慶は七代目松本幸四郎(現幸四郎さんのお祖父様)を、富樫は二代目市川左團次(現左團次さんとは血縁関係なし)をモデルにして昭和41年に制作。



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深く笠を被っていて顔のよく見えない義経像(モデルも不明)は、他の2体からは随分と間があいて平成7年に制作されたとのことです。

こちらの 【地図】 に「富樫・弁慶銅像」としか書かれていない所を見ると、義経像が完成されるまでの30年近くの間、マジで2体の像しか立っていなかったのでしょうかね。
う~ん、確かに勧進帳はあくまでも弁慶と富樫の両雄が主役(特に歌舞伎では)で、うかつに声を発せない受身の義経は影の薄い存在ではありますが、でも彼がいなければ決して成り立ち得ない話なのですけど…。





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銅像のすぐそばには「関之宮」という義経と富樫を祀る小祠も。
ここでは弁慶の分はなし? (?_?)




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銅像の裏手の坂道を少し登った所に「安宅関址」の石碑が。




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関址碑の近くにも与謝野晶子の同じ歌碑が建っていました。
こちらが古いもので、海岸べりのものは新調されたものってことでしょうか。




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さらに奥へ進むと安宅住吉神社の境内に。
ちょうどバスの団体さんが着いたところだったのか、随分多くの方が社の中に入って行かれました。何でも中では巫女さんによる「義経過安宅関図」の絵解きが行われるそうですが、残念ながら時間が押しておりましたので今回はパス。




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神社の境内に建つ弁慶像。
これがあるから先ほどの祠はなしだったのかしら?
歌舞伎の様式美を踏まえた先ほどの像より、こっちの方がそれらしいでしょうか (^^;)


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最後に安宅住吉神社の入口。
ここまで来て、どうやら逆の順序で回ってしまったらしいと気づきました (^^ゞ

安宅住吉神社の創建は遠く奈良時代にまで遡るそうですので、勧進帳の一件が起きた時には既にここに建っていたということになりますが、そもそも『平家物語』には登場せず、実は存在すら疑わしい安宅の関(詳細はこちらの記事を参照のこと)は、有名な伝承に則って後世に造成された史跡の可能性が大(爆)。

『義経記』など古典上に出てくる打擲の場は富山の伏木の「如意の渡し」となっており、一時はどちらが本家?論争も勃発したようですが、ただ、このエピソードが世間に大々的に広まったのが謡曲や歌舞伎の影響が大である以上、実否はともかく、やはり「安宅」でないと収まりがつかないでしょうね。










この日は閉館後になってしまっていて、見ることはできませんでしたが、最初の銅像3体が据えられている場所のすぐそばに、「勧進帳ものがたり館」という施設もあり、歌舞伎の「勧進帳」の名場面映像の鑑賞や十代市川団十郎氏が実際に舞台で袖を通したという衣装の展示、あるいは義経や弁慶の人間像を探る展示スペースなどがあるようですよ。


ということで、ざっと安宅の関を見て参りましたが、この北陸の海岸線沿いには義経がらみでもう一つ縁の地があります。

それは安宅の関のある小松市のお隣、加賀市にある「尼御前岬」。
北陸道下り線(金沢・富山方面行き)の尼御前サービスエリアからも歩いて行ける遊歩道の一角に、一体の尼姿の女性の銅像が建っています。




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この女性の名はそのままズバリ「尼御前」。
執拗な鎌倉方の包囲網を潜り抜け逃避行を続ける義経主従の中に紅一点、尼姿の女性が紛れていましたが、この先の「安宅の関」の厳重さを伝え聞いて、主人の足手まといとなることを憂い、一人この岬から身を投げたという悲しい伝説が残されています。

彼女の出自については不明で、どういう経緯で義経一行に付き従っていたのかはわかりません。
死と隣り合わせの逃避行中も義経のそば近くにいたということは、義経最愛の女性だったのかもしれませんし、尼とだけあって年齢不詳である所を見ると、実母の常磐御前や異父妹、あるいは乳母などの可能性もあるかも…???

まあ、これもまた、「安宅の関」の「勧進帳」のエピソードを踏まえての、その序曲的な位置づけで生み出された創作なのでしょうけどね。

なお、尼御前岬は波に侵食された岸壁と平らな奇岩が見られる越前加賀海岸国定公園随一の景勝地でもありますが、あいにくと今年の7月1日に遊歩道内に大きな陥没が発生し、広範囲にわたって立入禁止区域が設けられていたため、あまりよく見ることができませんでした。
替りに禁止になっていない区域から撮った海と空。




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東側にはわずかながら晴れ間ものぞいていますが、西には真っ黒い雲。晴れ間ゾーンにかかっているのはうろこ雲みたいですし、いったいいつの季節か判じ兼ねる空模様ですよね(~_~;)


それにしても、その陥没というのは直径2m・深さ12mと言いますから、まかり間違って落ちでもしたら、これはかなりヤバイですよね。




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これはまだ幾分波の穏やかな東側の海岸ですが、これでもかなり岩の下のほうがえぐられていますものね。これがどんどん奥深くへ入り込んで空洞を作り、場合によっては天然の落とし穴と化してしまうこともあると…。自然の猛威、恐るべし!
これは全面復旧には相当時間がかかるかもしれませんね (-_-;)




【このページの写真&動画は平成21年7月20日に撮影したものです】



《メモ》
  安宅住吉神社 【地図】
   石川県小松市安宅町タ17
   TEL:0761-22-8896

  安宅の関  【地図】
   石川県小松市安宅町タ140-4
   TEL:0761-21-6734(安宅ビューテラス)
   ※勧進帳ものがたり館 入館料… 一般300円、高校生以下150円
                  開館時間… 9:00-17:00(受付は16:30まで)
                  休館日… 毎週水曜日、年末年始


  尼御前岬 【地図】
   石川県加賀市美岬町
   TEL:0761-22-6678
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by kiratemari | 2009-08-07 22:29 | ├中部 | Trackback | Comments(0)
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