GWの旅(3)-倶利伽羅峠

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さて、せっかく砺波まで来ましたので、ついでに源平史跡めぐりも少々。
「砺波山の戦い」とも呼ばれる倶利伽羅峠の古戦場です。

砺波山は越中(富山県小矢部市)と(加賀石川県河北郡津幡町)の境にある山で標高277m。
寿永2年(1183)5月11日、平維盛を総大将とする平家の大軍7万騎と木曽義仲率いる軍勢がここで激突し、平家にとってはその後の凋落を決定付けたと言っても過言でない大敗を喫した合戦になります。



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倶利伽羅古戦場めぐりの富山県側の出発点となる埴生護国八幡宮。
木曽義仲はまずここに本陣を置き、戦勝祈願の願書を捧げたと言われています。



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境内に入って二の鳥居の傍らには、倶利伽羅合戦800年祭(1983年)を記念して建てられた源義仲の騎馬像が。


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そして、騎馬像の反対側の鳥居脇には、富山県の名水100選にも選ばれている「鳩清水」。
倶利伽羅山へ進軍するに当たり水がなくて困っていた源氏軍に、義仲の願書を受け入れた証か、ふいに一羽の白鳩が飛来し、山中にある滝まで案内したと伝えられ、この御手洗は約3km離れたその水源の滝から引かれているものだそうです。



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103段(かつては108段あったそうですが)の長い石段の上にある社殿。
慶長5年に前田利家により建立された重要文化財です。



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本殿の背後には義仲の祐筆・大夫坊覚明によって書かれたという願書の全文を写した石碑も。



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さて、埴生護国八幡宮を後にして、倶利伽羅山へ向う途に行き合った「砺波関」。
奈良時代にはかの万葉の歌人・大伴家持も国司として赴任したことがあり、
『焼太刀を礪波の関に明日よりは 守部やりそへ君をとどめむ』(万葉集第18巻4085)
という歌を残しています。



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倶利伽羅峠の入口辺りにある巴塚と葵塚。
義仲の寵を競った二人の女武者の供養塚です。

おなじみの巴御前は近江の粟津で義仲と別れた後、鎌倉方の御家人・和田義盛の妻となり朝比奈三郎義秀を生んだなどという眉唾物の後日談も伝わっていますが、それはさておき、最晩年には尼となってこの地で亡き人々の菩提を弔いつつ、91歳という長寿を全うして亡くなったと伝えられているようです。

一方の葵御前は『源平盛衰記』にちらっと名前が出て来る程度で、むしろ吉川英治作の『新平家物語』で知られている女性ではないでしょうか。『源平盛衰記』では砺波山の合戦(倶利伽羅峠の合戦)で討ち死にしたとあることから、そのままこの地に葬られたということなのでしょう。

しかし、おおよそ同じ一角にありながら、隣り合わず、数十メートルほど距離を置いて別々に建つ二つの塚は、同じ男を愛した二人の微妙な女心の表れなのでしょうか (?_?)



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巴塚&葵塚からまた少し山間に入って「塔の橋」へ。
ここが平家軍の最前線になり、谷を隔てた向こう側(今回通って来たルートでは手前側)の義仲軍の先鋒今井勢が陣取る矢立山に向けて盛大に矢を射掛けたと言います。



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そして、平家軍の本陣が置かれたという「猿が馬場」。
大軍を擁する平家軍は山中のわずかな平坦地に本陣を定め、ここで維盛ら主だった武将達が軍議を行ったと言います。本陣跡の標柱の前には、その軍議の卓に見立てた石机が設えられており、諸将の席次を示す駒札も立っていました。



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平家本隊はこの場所で野営し、先遣部隊を塔の橋へ兵を送り込んでいたということですね。
しかし、義仲は巧妙に平家軍の背後に回り込み、夜陰に乗じて一斉攻撃を加えると、富士川の合戦の再現のように慌てふためいた平家軍は雪崩を打って自ら地獄谷へ転落して行ったという… (-_-;)


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倶利伽羅峠と言えば牛たいまつ。
中国より伝わる「火牛の計」に習い、牛の角にたいまつを括り付けて敵陣へ追い遣り、平家軍のさらなる混乱を助長したという戦法ですが、まずは現実味も薄く、物語上の脚色と見るのが無難でしょうね。

ちなみに、本家の「火牛の計」は角には刃、尻尾にたいまつを括り付け、文字通りお尻に火が点いて暴れ狂う牛を敵陣に切り込ませるというもの。こちらの方がまだ理に適っている感じがしますね。




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本陣から少し高台に上った所にある「源平供養塔」。
こちらも800年祭の記念に建てられたもののようです。
現在の倶利伽羅峠は八重桜の名所にもなっており、盛りは過ぎていたようですが、あたかも手向けの花のように彩りを添えていました。


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その源平供養塔の背後にひっそりと佇む「為盛塚」。

平頼盛の次男で、11日の倶利伽羅峠の合戦で大敗を喫した後、翌12日未明に50騎を率いて果敢にも逆襲に転じたものの、義仲軍の武将樋口兼光によって首を刎ねられた悲運の公達……ということになっていますが…。

『愚管抄』などその後も生存していた可能性を示す史料もいくつか残っており、一の谷での能登守教経と同様、誤報の可能性もなきにしもあらずのようです (^_^;)

なお、対する樋口兼光という人物は、義仲の一番の側近として知られる今井四郎兼平の兄で、現在放映中の大河ドラマの主人公・樋口兼続(現在は直江兼続ですね)の遠いご先祖様に当たるという話もあります。




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さらに西へ進みまして、県境を越えて石川県側に出て「倶利伽羅不動寺」へ。
千葉県の成田不動尊、神奈川県の大山不動尊と共に日本三不動の一尊とされ、「倶利伽羅」という山の名前もこのお寺に由来しています。「倶利伽羅」はインドのサンスクリット語で「剣に黒い龍の巻きついた不動尊像」という意味で、倶利伽羅龍王などとも呼ばれています。


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それで巨大な刀の前に不動明王?

平家軍の背後に回り込んだ義仲軍は、この倶利伽羅不動寺を押さえて、ここから猿が馬場の平家本陣へ攻めかかったと言われています。



ということで、車での史跡めぐりでしたので見落とした箇所もいくつかありますが、まあ大よその位置関係はつかめたでしょうか。実際に自分の足で歩いて回るのがベストなのですが、端から端までというとかなりの距離があり、一日がかりでもちょっと厳しいそうで…(^_^;)

また、この後、日本海の夕日を見に行きがてら、安宅関へというのも考えていたのですが、残念ながらタイムアウト(天気が悪くて夕日も望めそうにありませんでしたし)。

同じく今回は見送りになった義仲の故郷・木曽福島の探索も含め、いずれまた訪問の機会を(高速道路1000円の間に)探りたいと思います。



【このページの写真は平成21年5月3日に撮影したものです】



《メモ》
  埴生護国八幡宮 【地図】
   富山県小矢部市埴生2992
   TEL:0766-67-1220

  源平倶利伽羅古戦場・本陣跡 【地図】
   富山県小矢部市埴生石坂

  倶利伽羅不動寺 【地図】
   石川県河北郡津幡町倶利伽羅リ-2
   TEL:076-288-1828
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by kiratemari | 2009-05-10 22:17 | ├北陸 | Trackback(1) | Comments(2)
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国内旅行を格安で楽しむ|温泉や世界遺産巡りの情報を集めました... more
Commented by Natsu at 2009-05-24 16:54 x
手鞠さん、はじめまして。
以前から時々このサイトを拝見していた平家ファンの者です。何日かぶりに見てみると富山のことを書かれていたので、思い切ってコメントしてみます。

私も倶利伽羅峠は地元ということもあり、1度行ったのですが、巴塚・葵塚の場所がよく分からなかったのです。行き止まりになっていて「あれ?」という感じだったので、この記事でやっと塚を見ることができました。たどり着くのが大変な場所ではありますが、もう一度倶利伽羅峠に行きたくなりました。

よろしければ、また富山においでください(^^)
ではでは、今後も記事を楽しみにしております。
Commented by 手鞠 at 2009-05-24 22:38 x
Natsu 様、初めまして!
以前からご覧いただいていたとのことで、今回コメントをいただけて大変嬉しく思います。
中々平家関連の記事が増えませんが(やっぱりいろいろ調べてから書かないといけませんので)、今後ともどうぞよろしくお願いします m(__)m

巴塚・葵塚は広い道路から少し山道を入った中にありまして、結構草ボウボウの中でしたので少し手間取りました。倶利伽羅峠は一本の街道沿いに史跡が連なっているので全体的に回りやすいと思うのですが、この巴塚・葵塚だけはちょっと手抜きというか(汗)、埒外に置かれているような感じもしましたね (^_^;)

高速道路1000円のおかげでそちら方面へのお出掛けは今後もありそうですよ。
山好きの親はアルペンルートに行きたいとも言っていますし (^^ゞ

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